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日本人がもっと、ミル『自由論』と「他者危害原則」に学ぶべき理由

近代社会の根本にある考え方

ポルノ規制と他者危害原則

筆者が大学生の頃に読んだ加藤尚武の『応用倫理学のすすめ』には、次のような一節がある。

「他者危害の原則は、自由主義の基本原則である。要するに、大人が自分勝手なことをするのは、黙って放っておくべきだという考えである。(中略)「たばこを止めるのは、お前の身のためだ」という理由で、禁煙を強制してよいとすると、政府による個人生活への干渉の限度がなくなってしまう。
問題は、ポルノが有害であるかどうかではない。たとえ有害であったとしても政府が個人にポルノ禁止を強制する権限が存在するかどうかが問題なのである。そこで個人の自由を確保する原理が「他者危害の原則」なのである。」(加藤尚武『応用倫理学のすすめ』丸善ライブラリー、1994年、6頁)

 

ポルノの話が出てくるのは、当時は「ヘアヌード」が社会的な議論になっていたからだ。加藤は日本のポルノ規制の議論が自由主義の基本原則である他者危害原則を無視して行われているとして、次のように手厳しい批判を加えている。

「日本でポルノ規制の問題が起こると「批判的である」と自称するツッパリ・ジャーナルが特集を組む。進歩的というブランドの確定した教授が理論的裏づけをする。ところが進歩派のタネ本はマルクス主義だから「エログロ規制は戦争への道だ」というトンでもない原則から話をする。(中略)おかげで日本ではポルノ規制の問題がジャーナリズムに登場するたびに、「他者危害の原則」にお呼びが掛からない。自由主義の原則を無視しているという点では、日本のジャーナリズムは全体主義の支配下にあるのと変わらない。」(6〜7頁)

日本は自由主義国家のはずなのにその基本原則である他者危害原則をジャーナリズムも大学教授も知らない、という批判である。

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