"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。
次々に建設された高さ世界一のビル
1930年の今日(5月27日)、アメリカ・ニューヨークでクライスラービル(Chrysler Building)が開業しました。
1920年代、第一次世界大戦で大きな利益を挙げたアメリカは未曾有の好景気に沸いており、ニューヨークなどの大都市では高層ビルの建築ラッシュが始まりました。アメリカの三大自動車メーカー(通称“Big Three”)のひとつクライスラー社の総帥ウォルター・クライスラーは、世界一の高さの自社ビルを建設して社の発展ぶりを示そうとしました。
クライスラービルは、同時期に着工したニューヨークのウォールタワーと世界一の座を争う中で、目標の高さどんどん引き上げていきました。当初は246mの高さになる予定が、ウォールタワーの260mを追い抜こうと282mに変更されました。
しかしこの情報をキャッチしたウォールタワー側が283mまで高さを引き上げると、クライスラービルの主任設計士は頂上に尖塔を取りつけることを決め、最終的な高さは319mとなりました。

熾烈な建設競争を勝ち抜いたクライスラービルは、気づけばパリのエッフェル塔(当時の高さは312m)をも抜き去って世界一の高さになっていました。付け足された尖塔部分は、20世紀初頭に流行した「アール・デコ」という建築様式の最たる例として建築史に残っています。
ところが世界一高い高層ビルの座は、翌年の1931年にやはりニューヨークに建てられたエンパイアステートビルの完成により、わずか1年で明け渡すこととなりました。
