金曜ドラマ『俺の家の話』公式ホームページより

『俺の家の話』は、「ドラマのお約束」をひっくり返した傑作だった…!

宮藤官九郎が込めた「メッセージ」

能とプロレスの意外な共通点

能とプロレスは正反対のように見えて、実は似ている。宮藤官九郎脚本『俺の家の話』はそのことを見事に活かした傑作ドラマだった。

両者が正反対なのは一目瞭然だろう。能が日本の格式高い伝統芸能であり人間国宝を擁するのに対して、プロレスは肉体がぶつかり合う格闘技であり大衆的なエンターテインメントだ。そして能の宗家が血縁による世襲制であるのに対して、プロレスの団体は技の継承はあっても血縁とは無関係である。

しかし両者には意外と共通点も多い。たとえば能舞台とリングはどちらも観客に囲まれた四角い空間だし、能役者とプロレスラーはそれぞれに面/覆面をつけ、作中で言われるようにどちらも体幹が重要で、そして何より、生と死にかかわるという点で共通している。

能とは夢幻能に代表されるようにしばしば亡霊が登場する、生と死をめぐる芸術である。プロレスも実は生と死にかかわる格闘技だ(『俺の家の話』では、この事実は最終回でいきなり顕わになり、誰も予想していなかった結末へと収れんしていくことになる)。つまり能とプロレスは、乱暴な言い方をすれば、真逆でありながら重なり合う両義的な関係なのである。

主人公・観山寿一役を演じた長瀬智也[Photo by gettyimages]
 

「家=内」と「外」の境界を超える

『俺の家の話』は、この2つの世界に属する主人公・観山寿一(長瀬智也)と人間国宝の父・観山寿三郎(西田敏行)を中心とするドラマである。

観山流宗家である観山家は血縁で強固に結びつき、いわば閉じた「家」である。このことは、宗家が世襲制であるというだけではなく、たとえば家族旅行に、寿三郎の血を分けた隠し子であることが発覚した寿限無(桐谷健太)は参加できるが、名目上は寿三郎の婚約者であるさくら(戸田恵梨香)や長女・舞(江口のりこ)の夫である長田(秋山竜次)は、それぞれに理由はあるものの同行できないといったことにも表れている。

編集部からのお知らせ!

関連記事