「映画を早送りで観る人たち」の出現が示す、恐ろしい未来

「言外の意味」が汲み取れなくなる…?
稲田 豊史 プロフィール

映画を5分で観る人が大勢いる

それでなくても現代では、あらゆるメディアが、ユーザーの可処分時間を取り合っており、熾烈さは激しくなる一方だ。しかも映像メディアの競合は、映像メディアだけにあらず。TwitterやインスタグラムやLINEも立派な競合相手だ。

話題にはついていきたい。ただ、観るべき作品も顔を出すべきSNSも多すぎて、とにかく時間がない。それを「時短」が解決する。

 

10代の若者の間で、倍速視聴は以前から当たり前だった。地上波ドラマを「忙しいし、友達の間の話題についていきたいだけなので、録画して倍速で見る」「内容さえわかればいいからざっと見て、細かいところはWikipediaで補足する」等。ちなみに、YouTubeやニコニコ動画にも、再生速度の調整機能がある。

そのYouTube上には、5分の動画で映画1本を結末まで解説してくれるチャンネルまである。1動画あたり、コンスタントに数万〜数十万回再生、人気のものだと数百万回も再生されているから、なかなかのものだ。「古今東西の名著100冊を5分で読む」のようなノリか。あるいは、「忙しいビジネスマンが、通勤中にオーディオブックでベストセラービジネス本を聴く」ような行動に近いのかもしれない。

〔PHOTO〕iStock

「コスパ」を求める若者たち

2つめの背景は、コスパ(コストパフォーマンス)を求める人が増えたこと

倍速視聴・10秒飛ばしする人が追求しているのは、「時間的コスパ」だ。
フォロワー数十万人を誇る、あるビジネス系インフルエンサーが、Twitterで映画の倍速視聴を公言したときも、そこについたリプは「コスパが良くなっていい」といった好意的な意見が多くを占めた。

彼らは映画やドラマの視聴を、速読のようなものと捉えているのかもしれない。彼らは速読と同じく、訓練によって映像作品を「速く」「効率的に」体験できると考えている(速読が書物の堪能度・理解度を阻害するか、しないかの議論は、ここではしないでおく)。

しかし、ビジネス書ならともかく、なぜ映像作品にまで「コスパ」を求めるのか。なぜそこまでして、効率を求めるのか。「話題作についていきたい」だけでは、動機としてはやや不足に思える。

仕事で大学生たちと交流の機会があるという、あるマーケターの方の言葉に、そのヒントがあった。

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