「映画を早送りで観る人たち」の出現が示す、恐ろしい未来

「言外の意味」が汲み取れなくなる…?
稲田 豊史 プロフィール

映像作品の供給過多

ひとつめは、作品が多すぎること

現在の人類は、今までの歴史のなかで、もっとも多くの映像作品を、もっとも安価に視聴できる時代に生きている。昔、と言ってもほんの十数年前まで、映像作品を鑑賞する際には、もう少しお金がかかっていた。連続ドラマをDVD(もしくはVHS)レンタルするにしても、DVD1枚にたった2話しか収録されていない。それで1泊2日、300円前後。今ほど充実した商業動画配信サービスもない。それゆえ、浴びるように映像作品を観ていたのは、そこに相応のお金をかけてもいいと覚悟した、コアな映画マニアやアニメファンだけだった。

ところが現在、NetflixやAmazonプライム・ビデオをはじめとした定額制動画配信サービスは、月々数百円から千数百円という安価。たったそれだけの出費で何十本、その気になれば何百本もの映画、連続ドラマ、アニメのTVシリーズが観られる。従来からあるTVの地上波、BS、CSといった放送メディア、無料の動画配信サイトで観られる作品なども加えれば、映像作品の供給数はあまりにも多い。明らかに供給過多だ。

〔PHOTO〕iStock
 

その中から、同時多発的にいくつかの作品が話題になる。しかもそれらは、ドラマ1シリーズ全16話(『梨泰院クラス』)だの、TVアニメ2クール全26話(『鬼滅の刃』)だの、2時間の映画20数本でひとつの世界観をなしている(『アベンジャーズ』ほかマーベルの映画シリーズ)だのと、視聴するには時間がいくらあっても足りない。

現代人は、膨大な映像作品をチェックする時間に、とにかく追われている。

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