∞はイギリスのウォリスが考えたもので,彼の著書『無限の算術』(1656年)で初めて使われた記号だという。1000に対する初期ローマの数字「ↀ」からヒントを得たといわれているが,異説もある。
ウォリスの本では1/0=∞, 1/∞=0という記述があり,0に相対する記号として00をくっつけて∞としたのではないかと推測した本もある。
いずれにしても,この記号∞は記号の中では特殊である。なぜならこれは数を表すのではなく,非常に大きい「状況」を表す記号だからである。つまり,∞は無限大を意味するものであって,数としての記号ではない。
ただ,無限大とは何かということを言葉で表現するのは難しい。
イソップ物語でこんな話がある。
カエルの子ども(おたまじゃくしではない)が牛を見てびっくりし,ほうほうの体で帰ってきた。カエルの子どもはお母さんにいった。
「お母さん,とっても大きいものを見たよ」
母親は,そんな大きいものはないといって,お腹を膨らませて見せると子どもが,
「いや,もっと大きかったよ」
というので,また膨らませてみせるが,もっともっとといううちにお腹がパンクしてしまった
という,きわめて残酷な話なのであるが,人のいうことをあまり疑ってかかるものではないとか,人の真似ばかりするなとかいう教訓的な話である。
とはいうものの,カエルの子どもにとって牛はまさに表現できないくらいに大きいものだったに違いない。カエルの親子が無限大を知っていたら,「∞」で済んでしまって,凄惨な結果を招かずに済んだかもしれない。
実際,この記号を発明してくれたおかげで数学も悲惨な結果を辿らずに済んだといえる。