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解けない5次方程式にも実は解法があった? 方程式が「解けない」とはどういう意味なのか

話題の「三体問題」にも関係しています

SF小説の題材として扱われ一躍有名になった「三体問題」は“解けない問題”として知られています。しかし、ここでいう“解けない”とはいったいどういう意味なのでしょうか? 理論物理学の専門家である弘前大学の浅田秀樹さんに「方程式が解ける/解けない」ということの意味を、歴史を紐解きながらやさしく解説していただきました。

(この記事はブルーバックス『三体問題』の内容を再構成したものです)

2次方程式の解の個数は

中学で習った数学を少し覚えている方ならば、2次方程式の解の個数を聞かれれば、「解は2個です!」と直ちに返事することでしょう。

少し注意深い人なら、「ただし、重根の場合は1個です」というコメントを追加することでしょう。ここでの重根とは、2次方程式の解の公式における根号(ルート)の中身がゼロになる場合です。

中学校の計算問題では解が2個(重根なら1個)の場合ばかりです。しかし、例外が存在するのです。図形で説明すると、2次方程式の左辺がある放物線を表していて、右辺に対応するもう一つの放物線を考えます。二つの放物線は一般に二つの交点を持ちます。この交点のx座標の値が2次方程式の解に相当します。

しかし、二つの放物線が同一の場合は、その2本の曲線は重なります。すなわち、すべての実数xが、その2次方程式を満たします。つまり無限個の解が存在します。

この例外的な状況は、2次方程式の三つの係数すべてがゼロの場合です。方程式の構造が2次方程式に見えても、解の個数が2個であるとは限らないのです。無限個の解が許される場合があるのです。いささか反則のような話ですが。

3次方程式と4次方程式も解けた

まず3次方程式から始めましょう。

3次方程式には、代数学の基本定理によって、高々3個の複素数の解が存在することが分かっています。

数学史によれば、古代バビロニアの時代には、すでに特殊な2次方程式の解法が知られていたそうです。しかし、次数を一つ増やしただけの3次方程式の解の公式が見出されたのは、なんと16世紀になってからのことです。

イタリアの数学者ジェロラモ・カルダノが、彼の著書『アルス・マグナ』の中でその解法を公表しました。実際には、初めて3次方程式の解法を発見したのはイタリア人数学者のニコロ・タルタリアです。

カルダノの肖像

絶対公表しないとの約束を取り付けた上で、タルタリアはカルダノにその解法を伝授したのですが、カルダノはその約束を破って公表してしまったのです。こういう経緯があるにもかかわらず、その解はタルタリアの公式ではなく、「カルダノの公式」とよばれています。

なお、この3次方程式の解を表現するさいに、カルダノは「虚数」の概念を世界で初めて導入しました。

それまでの数学には実数しか存在しなかったのです。数の世界を実数から複素数へと拡大することによって、カルダノは任意の係数に対する3次方程式の解を表す数式を得ることができたのです。それまでは、実数の解が得られる場合の、特殊な3次方程式しか解けなかったのです。

ちなみに、1637年、フランスの数学者ルネ・デカルトが複素数の虚部を「想像上の数」(フランス語:Nombre imaginaire)とよびました。これが英語での「imaginary number」(和訳:虚数)にあたります。

カルダノは同じ著書の中で4次方程式の解法も公表します。4次方程式の解法を最初に発見したのは、カルダノの弟子のルドヴィコ・フェラーリです。こちらの公式は、「フェラーリの公式」とよばれます。

3次方程式の解と4次方程式の解のどちらも、方程式の係数から代数的な操作で、つまり四則演算およびベキ根の操作のみを用いて作ることができます。

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