米中で激化する覇権争いの行方は? なぜアメリカはTikTokに驚異を感じているのか? ジャーナリスト・大西康之氏の新刊『GAFAMvs.中国Big4 デジタルキングダムを制するのは誰か?』より一部抜粋・再編集して紹介する。
米国はなぜ「ティックトック」を恐れるのか
「ティックトックの米国内での利用を禁じることになるだろう」
トランプ米大統領(当時)は2020年7月31日、大統領専用機内で記者団にこう漏らした。米中経済摩擦がモノからネットサービスに飛び火した瞬間だ。

バイトダンスのTikTok(ティックトック)は米国内で若者を中心に3000万人の利用者がいるが、米政権は「安全保障上の懸念がある」(ポンペオ国務長官)とデータ安全保障の強化の観点から同サービスの利用禁止を検討していた。
1週間後の8月6日、トランプ大統領はティックトックに関わる取引を45日後から禁じる大統領令に署名した。同じく中国のSNSアプリ「ウィーチャット」を提供するネット大手、テンセントとの取引も禁じると表明した。
大統領令は、緊急時に大統領権限で民間の経済活動を制限できる「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づいており、トランプは「中国製アプリを使えば米国人の個人情報が中国政府に流出し、安全保障上の脅威になる」と警告した。
米中経済摩擦の新たな火種としてにわかに浮上したティックトックとは何か。