「就活」の2文字を見ると、今でも少しひやりとする。私はいわゆる「氷河期」世代。あまりのしんどさに就職を諦める友人も出る中、試行錯誤の末に遅い内定を受けた時には「もうあんな目に遭わなくていいんだ!」と、心からホッとした。それほど就活は、つらい体験の連続だった。ただ時間が経って考えてみると、もっと他にやりようがあった気もする。採用側に回ったことで、初めて見えたこともある。あの時、私は何を知ればよかったのか。要らぬ苦労はなんだったのか。自分にできていたこと、できていなかったことはなんだろうか──。今さらながらそんな答え合わせをしてみたくなり、本書『就活のワナ あなたの魅力が伝わらない理由』(石渡嶺司)を手に取ることにした。
焦る気持ちで食い入るように読みたくなる
著者の肩書は「大学ジャーナリスト」。耳慣れない単語だが、大学や就活にくわえて、それらに関連するテーマである教育や転職・キャリアについても、20年近い取材歴を持つ専門家だという。「はじめに」と題された冒頭では、この経歴が「私の強みは~」といった書きぶりで載っていた。「なんだか自己PRみたい」と思っていたところ、著者自身もそう書き添えていたので思わず吹き出す。読み始めの緊張がほぐれていった。
いっぽう、各章のタイトルは刺激的だ。「就活時期はウソだらけ」「『インターンシップわからん』で就活格差」「間違いだらけの就活準備」……もし自分が就活生だったら、焦る気持ちで食い入るように読み進めたことだろう。「スタートラインに立つ前の話」が立て続けに挙げられている。
たとえば第1章の最初では「就活のタテマエとホンネ」と称して、就活時期の具体的な流れが紹介されていた。その上で著者は、就活ルールと実際のスケジュールが別に動くことについて、とても重要な「前提」を説明する。