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コロナ禍の「外出自粛」は地球を「熱汚染」から救うか?——気持ちが前向きになる「ちょっといい研究」

いつまでも続く自粛の日々に、探検隊員たちのストレスも限界に達しています。しかし、ぼんやり眺めていたPCに見つけたある情報が、くすぶっていた「探検魂」に火をつけました。

いま、私たちがじーっと家にいることが、もしかしたら地球を災厄から遠ざけているかもしれないというのです。それ、ほんまでっか?(なぜ関西弁かは読めばわかります)

さあ、隊員たちと一緒にリモート探検に出発しましょう!

コロナ自粛でオフィス街の気温が下がる?!

新型コロナウイルス感染拡大を抑え込むための緊急事態宣言が7都府県に初めて出された、2020年4月7日。あの日、「人と人の接触機会を最低7割、極力8割削減」と目標が設定され、以来、宣言が解除されても、「不要不急の外出自粛」がたびたび呼びかけられてきたこの1年。

職場の同僚とランチに行きたい。居酒屋でテーブル囲んで口角泡を飛ばしたい。バックスタンドで隣の観客と肩を組んで応援したい……湧き上がる思いを腹に溜めながら、ひたすら自宅でパソコンに向かう日々が続く。われわれはウィズコロナ時代に入り、もう二度と元には戻れないという声も聞くが、そんなことってあるだろうか……

鬱々とした思いでネットサーフィンする探検隊員Aの目に、ひとつのタイトルが目に止まった。

「新型コロナ外出自粛でヒートアイランド緩和と省エネ効果」

産業技術総合研究所が2020年11月6日に発表したプレスリリースだ。さっそく、他の隊員とチャットで共有する。

  • 隊員A「なんか、これいい話じゃない?」
  • 隊員B「災い転じて福となす、みたいな?」
  • 隊員C「転んでもタダじゃ起きない、みたいな?!」

だが、そのページを探検隊員たちが読みはじめると……。

  • 「えっ」

隊員Aが絶句する。

  • 「大阪のオフィス街で人口が7割減ったら、気温が0.13度下がると推定……って?」

すかさず隊員Bと隊員Cがツッコみを入れる。

  • 隊員B「暑い! 暑い! えらい暑いわー!! うわあ、気温33度やて!」
  • 隊員C「いやいやお客さん、よう見なはれ。人出が減ったから32.87度になってますでェ!」
  • 隊員B「わー、涼しくなってたん? テレワーク頑張ってよかったわ……って、そんなん、いっしょやろっ!! ごちゃごちゃ言われるぶん、よけい暑苦しいわ!」

手の甲で隊員Cの胸を小突くふりをしてから、隊員Bが隊員Aにいう。

  • 「……って、ことやろ?」
  • 「そうやな」と答える隊員A。「ウチらも気ぃついたら関西弁や」と隊員C。

やがて一同、シンクロしてこう言った。

  • 「産総研の人、絶対、僕たちを待ってはる!!」

というわけで、われわれ探検隊は産総研にオンラインでツッコんであげることにしたのであった。

バカにできない0.13度の低下

くだんの研究を主導した、産総研・環境創生研究部門 環境動態評価研究グループの高根雄也さん(「高」は、なべぶた下の口上下がのびた〈はしごだか〉)がパソコンの画面に登場した。挨拶もそこそこに、この発表、どうも納得がいかないのですが……と切り出す隊員A。すると高根さんはすかさず、「気温が0.13度下がること」の意味を説明しはじめた。

【写真】高根さん高根雄也さん

「この発表は、外出自粛によって、朝9時から夕方6時までの平均気温が下がるというところに大きな意味があります」

日中の平均気温が下がることに意味があるということ?

「夜間であれば、地表付近の空気と上空の空気が混ざりにくい安定状態になるため、エアコンの室外機や自動車の排ガスなど、地表での人間の活動によって生じる『人工排熱』の気温への影響が比較的大きくなります。しかし、日中は地表と上空の空気が上空1000〜1500mくらいまでよく混ざる状態になりますから、人工排熱の影響はかなり希釈されるはずなのです。にもかかわらず、気温が0.13度も下がるというのは驚きでした。いかに人間の活動がたくさん熱を出しているかを実感しました」

【写真】都市気候モデル図1 大阪市のオフィス街は外出自粛によって日中の人口が感染拡大前に比べ 7 割ほど減少した 。これにより、電力消費量が最大で約40 %低下し、気温が 0.13 ℃低下したと推定される。拡大画像はこちら(産業技術総合研究所・2020年11月6日発表のプレスリリースより)

むむっ、専門家は着眼点が違う……と隊員Bは思った。

なぜ、関西弁じゃない……と隊員Cは思った。

「たとえば外出自粛によって夏の日中の平均気温が0.1度低い日が1ヵ月も続いたら、健康被害の状況にも違いが現れてくるかもしれません」

そうか、地球温暖化の議論だって、平均気温が1.5度上昇するか、2度上昇するかで地球環境が全然違ってくるという話だ。「0.1度」をバカにしちゃいけない。

「ヒートアイランド緩和策についてはこれまで、緑化とか、建築材の工夫などが研究されてきました。それらの対策の効果も、0.2度とか、0.3度とか、似たようなレベルの気温低下なのです。実は今回の計算でも、場所によっては0.3度近く下がっているところもあったのですが、わずかな地点の最大値だけを前面に出してしまうと誤解を招く恐れがありますから、オフィス街全体での平均的な気温低下として0.13度という数字を出しています」

ううっ、ツッコめない。われわれはスタンバっていた手の甲を下ろすしかなかった。

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