『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が大ヒットし、高い評価を得ています。
エヴァといえば毎回、賛否両論が展開されることで有名ですが、今回はどうもいつもと様子が違っているようです。なぜなら、テレビ版からリアルタイムで見てきた昔からのファンがおおむね大絶賛しているからです。
筆者は、主な識者のコメントをざっと調べてみましたが、狂喜と言っても過言ではない褒めちぎりぶりが大半でした。とはいえ、賛否の否に該当するものがない訳ではありません。
まず、『シン・エヴァ』が旧エヴァと比較して物語としての衝撃性や意外性があまりないというものがありました。確かに、作品のトーンとして『シン・エヴァ』は、明らかに希望の物語の色彩が強いうえ、既視感が拭えない演出があったことは否定できません。これは旧エヴァへの思い入れの度合いも影響しているのかもしれません。
また、新劇場版の3作などを踏まえて、キャラクターの変化がご都合主義的で終わらせ方として強引ではないかといったものもありました。これも、希望の物語ありきで導き出された筋書きに従った結果といえ、1本の上映で収めるためには詳細は省くしかなかった事情が想像できます。
それ以外にも様々な指摘がありましたが、とりわけ興味深かったのは、作品そのものへの論評とは異なる心情の吐露でした。『シン・エヴァ』を鑑賞して感動したけれども、恋人を作れ、現実に戻って幸せをつかめと言われても、もう手遅れなんだが……といったような反応でした。