「個人よりチーム」の考え方

2016年、広島カープは25年ぶり7度目の優勝を果たした。鈴木選手も打率3割を達成し、ベストナイン、ゴールデン・グラブ賞を受賞。当時の緒方監督が試合後に言った「神ってる」という言葉が流行語大賞にもなり、鈴木選手が広島代表として授賞式に参加した。こうして一躍スターに上り詰めた彼の活躍の裏にはこういった肉体改造があったのだ。大谷選手は鈴木選手の野球人生に影響を与えた人物の一人なのだろう。

私が鈴木選手の過去のインタビューを見たり読んだりするにつけても、どんなときも個人の成績よりもチームの勝利に対する思いが人一倍強いように感じた。どれだけ自分の成績が良くても「チーム」が勝たなければ意味がない。個人競技を長年やってきた私は、なぜその考え方ができるのか尋ねた。
そしてその答えはやはり野球にあった。

「小学生の頃、一匹狼みたいな感じで、ピッチャーで4番を任されてたんです。『自分が打って投げてチームを勝たせたい』という考えでずっとやってたんです。リトルリーグは普通のグラウンドより小さかったり、ピッチャーとキャッチャーの距離が短かかったりして、投げたボールをキャッチャーが取れないことがよくあった。『野球は一人じゃできないんだ』と最初に感じたのはここでしたね。そしていくら自分が打っても自分が投げてなくて打たれてしまえば負ける。それも実感しました。
中学では、もちろん自分が打って投げて完封して勝ちたい思いもあったけど、それよりも一人じゃできないし、一緒に勝ちたいと思いました。団体競技がすごい好きなんです」

2016年の対オランダ戦。広島のチームでも、日本代表でも、一緒に勝ちたいという思いが鈴木選手を支えている Photo by Getty Images
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「広島の主将」の意味

もちろん、プロになると、みんなで勝とうよ!というきれいごとだけでは済まない。

「確かに、プロは団体競技だけど個人の方が強い。当然、自分の成績が悪ければ年棒が落ちて評価が下がっていく世界なので、そこがプロの難しいところではありますね。でも僕は変わらないです。お金はもちろん大切だけど、お金だけでやってるわけでもないし、僕はただみんなと普通に優勝したい、楽しくみんなが活躍して喜びを分かち合いたい。どうしてもプロだと出られない選手もいて、優勝したときも『嬉しいけど出られてないから半々』という人もいる。でもそれって悲しいじゃないですか。やっぱりチームとしてやってて、みんなが加わって、みんなで勝って、みんなで喜んだ方が僕は嬉しい。だから自分が役に立つならみんなにアドバイスしたいし、僕ができることはしたいと思います。ただ野球が好きで、日々いろんな進化を見つけたり、毎日自分の身体が変わっていくのもわかるし、今日バッティング練習が良くても次の日がダメだったり、よくするために引き出しを増やしたり、そういう繰り返しが楽しいです」

今期からは広島カープのキャプテン制が復活し、大瀬良選手と共にキャプテンに任命された。キャプテンとしてのプレッシャーは感じるのだろうか。
「全くないです。むしろかっこいいマークをつけてみたかったんです。今まで通り普通にやって気づくことがあれば行動できますよね。後輩へのアドバイスだったり……あと、ピッチャーと野手はプロだと練習時間が違ったり、別行動が増えるのでコミュニケーションをとる時間が少ないんですよね。今回ピッチャー側にもキャプテンがいるので、ピッチャーとの連携をとるための役を担いたいです。逆にキャプテンになってやりやすいことが増えたんじゃないですかね」

目を輝かせ楽しそうに話す鈴木選手は、プロの世界に入ってもただただ『みんなでやる野球』を愛し続けている野球少年のように思えた。初めて野球をしたときの女友達、侍ジャパンでの大谷選手、「かなわない」という想いをそのまま受け入れながら、自分も成長することでみんなで勝つことの素晴らしさを感じてきたからなのだろうか。

次回はアマチュアとプロ、背負うものが大きく変わるその人生の転機や鈴木選手の心の在り方を大きく変えたある出来事について語ってくれたことを、お伝えしていく。

鈴木誠也選手が主将をつとめる広島東洋カープの試合スケジュールは公式HPをご確認ください。