写真:森清
# ミャンマー

ITから呪術まで…“あらゆる手段”で軍と戦う「在日ミャンマー人」のリアル

「反クーデター」の元で起きた一致団結
ミャンマーが軍政クーデターに揺れている。『西南シルクロードは密林に消える』『ミャンマーの柳生一族』などで、現地を取材した高野秀行が、東京のミャンマー人たちの生の声を緊急取材した。 写真/森清

前回の記事はこちら→『祖国が軍政クーデターに揺れる「東京のミャンマー人」たちの本当の声

「多様性と混沌」のミャンマー

高田馬場は別名「リトルヤンゴン」と呼ばれ、十軒以上のミャンマーレストランが軒を連ねる。中でも中心的存在は駅の真ん前にあるタックイレブンという古いビル。ここにはミャンマーレストランが二軒入っているほか、上の階にはミャンマーの食材店がいくつも並んでいる。

ミャンマー料理店の老舗〈ノングインレイ〉はこのタックイレブンの一階にある。モモさんのゴールデンバガンと同様、ここも経営者はシャン人で、シャン料理を得意とする。ある意味で「多様性と混沌のミャンマー」を体現するかのようなごった煮感にあふれた店だ。

高田馬場にあるミャンマー料理店の老舗「ノングインレイ」

私は二十年前からこの店に通っている。以前、NHKの番組で料理研究家の枝元なほみさんと対談したとき、「高野さんの好きなレストランでやりましょう」と言われ、この店を指名した。

収録終了後は枝元さんと店の共同経営者である山田泰正さん(日本名)と一緒に飲んだが、枝元さんがシャン料理について訊ねるどんな質問にも即答する山田さんの底知れない料理の知識に私も枝元さんも驚嘆したものだ。

山田さんは七十代半ば。もとはラオス北部に生まれたシャン人だが、ミャンマーで育ち、“ミャンマーの東大”的存在であるヤンゴン大学の物理学科を卒業した。

ちなみに今、五十歳以上のミャンマー人のエリートはやたら「ヤンゴン大学物理学科・数学科卒」が多い。ゴールデンバガンのモモさんもそうだ。

大学の数が少なかったうえ、軍政が「学生に政治学や歴史学をやらせるのは変な知識を持たせてよくない」と判断し、文系でなく理系の学科に偏らせていたからだ。

理系といっても国際社会から孤立していた軍政ミャンマーでは実験設備を整えることが難しかったため、工学部系は限られ、もっぱら座学となった。だから不自然に物理学科と数学科の定員が多いのである。

 
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