2021.03.24
# 本

日本の若者が深い友人関係を築けなくなった「決定的理由」

冷たい友人関係が蔓延している
飯田 一史 プロフィール

――1980年代と「友情」と言えば、1968年に創刊された「週刊少年ジャンプ」が「友情・努力・勝利」を掲げ、80年代には爆発的に部数を伸ばしたことが想起されますが、何か関係がありますか?

石田 自由で自発的な友人関係というものが世間の中に浸透していった80年代に『ジャンプ』は部数を積み上げていきました。血縁や地域とのつながり、あるいは会社の差配で決まる上下関係とは異なり、感情的な結びつきによって作られる人間関係が80年代には社会的に前面に押し出されてきます。その典型が「友人」と「恋愛」です。

当時の社会調査によれば、80年代前半には、婚前交渉を許容する人はまだ3割程度しかいなかった。結婚を前提とせずに付き合うことは比較的珍しく、「恋愛」と「セックス」と「結婚」はあまり離れていなかった。それが80年代後半にはトレンディドラマが流行し、恋愛のための恋愛がブームになる。それと少年マンガなどにおいて友情がフォーカスされる時期は重なっていた。

そうした新しい「自由な恋愛」「自由な友人関係」は、70年代までの固定的で息苦しい関係よりも魅力的に見え、自発的な結びつきゆえに「真に心を通い合わせることができる」という幻想をまとっていた。社会調査を見ても、友人関係に対する満足度は上がり、「友人といると楽しい」という意見が増えていました。

 

近年、「家族」回帰が起きている理由

――しかし日本では、現在40~50代の団塊ジュニア世代が中高生だった80年代後半からすでに「あっさりした関係を望む」「親友でも本当に信用できないと感じる人が増えている」という調査結果があり、90年代以降もその傾向は続いています。つまり「最近の若者」が友達関係をうまく築けない状態が、30年続いていることになります。背景には何があるのでしょうか。

石田 70年代までの友人関係は会社や地域の付き合いから生まれていたため、「いつこの友情が解消されるかわからない」という不安はありませんでした。ところが80年代以降、「自由で自発的なもの」に友人関係は変わり、関係を維持するために要求されるコミュニケーション技能が増えた。自分から働きかけなければならず、失敗すれば失われる関係になった。そうなればうまくいかないことも増え、あるいは及び腰になるのは当然です。

さらに90年代にはポケベル、PHS、携帯電話といった情報通信端末が普及し、友達同士が空間を共有することすら必須ではなくなりました。なんとなくグループで同じ場所に溜まっているから友達だろう、みたいなことすら減っていく。言いかえれば、さらに積極的に振る舞わないと、友人関係が維持できなくなっていった。

それが加速して負の面が顕在化していくのが2000年代以降です。各種社会調査上でも友人関係に対して抱くのは80年代半ばまでの「開放的で楽しい」という感覚よりも、「付き合っていくためには気を遣わないといけなくて心配」という側面が強くなっていく――この傾向は今に至るまで続いています。

だからこそ、近年では悩みがあったときに友人ではなく家族に相談している人が増えていますし、一部では恋愛においても「家族になるなら付き合う」というかつての恋愛観への回帰が見られます。

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