『鬼滅の刃』『呪術廻戦』…「ジャンプ」だけが“圧倒的一人勝ち”している「納得の理由」

飯田 一史 プロフィール

「引き抜き」より「新人の新連載」を重視

――「新しく立ち上げた作品でヒットを飛ばす」ことが編集者の評価に関わるとしても、「ジャンプ」では他誌と比べて作家の引き抜きが少なく、「自前の新人で大ヒットを作る」ことに編集者の意識が向いている印象があります。でもある程度育った作家と組んだ方が普通に考えると作りやすいですよね? 新人育成には手間もお金もかかるわけですから。

籾山 ありがたいことに「ジャンプ」に来てくれる新人は「マンガ家になりたい」じゃなくて「ジャンプで連載したい」と思ってくれている作家が多いんです。ロールモデルが『ONE PIECE』『DRAGON BALL』『NARUTO-ナルト-』『鬼滅の刃』のような国民的、ないしは世界的なヒットになっている。そういう志の大きい新人と「とりあえずデビューしたい」という描き手とは、粘りと伸びしろが違います。それを考えると、最初から「ジャンプ」を目指して来てくれた才能の原石を二人三脚で育てていくほうが、よそから作家を引き抜くよりも可能性が高いとうちの編集部員たちは考えているんじゃないでしょうか。

齊藤 他誌の編集者の話などを聞いても、よそで活躍している作家さんと作品をつくるほうがむしろ時間がかかる印象があります。そもそも描いてもらえるようになるまで数年かかったりする。それに加えて、その媒体に合わせて作家さんに方向性をすり合わせてもらうとなると、さらに時間がかかる。だったら最初から新人と組んだほうがむしろ効率がいいというのが現場の感覚です。もちろん、自分が本当に一緒にマンガを作ってみたいと思える作家さんがいたら積極的に声をかけなよ! と推奨はしています。

ちょっと矛盾するような言い方に聞こえるかもしれないですが、「ジャンプ」の編集者は「数年以内に結果を出す」ことは求められるけれども「今すぐ出せ」ではないんです。作家にも「結果をすぐ出す」ことは求めない。時間をかけて描き手が成長していくことに対しては編集部的にも会社的にも寛容だし、援助もする。2010年代にいくつかのIT企業がマンガ制作に新規参入したときに「マンガを作るのってこんなに時間がかかるのか」と面食らったと伝え聞いていますが、うちは会社的に「時間もお金もかかる」のが当然だと思ってもらえています。競争はあるし、リミットも決まっているけれども、途中経過に関してせっつかれることはない。そうやって鷹揚に構えてもらっているほうがホームランを狙うためには逆に効率が良いというか、だからこそ新人に力を入れられるというか……。

籾山 そうですね。「ジャンプ」では最終的にホームランを打つことが大事であって、その途中で何回失敗しようと作家も編集者もまったく評価にカウントされないんですよ。

齊藤 フットワーク軽く読み切りをたくさん掲載できるのも「前回アンケートの結果がダメだったからこの作家の作品はもう載せない」みたいな慣習が一切ないからですね。

 

――なるほど。「数百万、数千万部売れる作品を立ち上げる」という大目標はあるけれども、数年の時間軸の中ではたくさん時間や予算をかけてもいいし、何回試してもいい。その方が萎縮せずにたくさん可能性を試せる。だからこそ、その中からホームラン級のヒットも出てきやすい、と。

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