忘れられた極秘核ミサイル計画の「遺産」…冷凍庫の奥のサンプルから見つかったものとは?

熊谷 玲美 プロフィール

60年ぶりに開封されたガラス瓶

未開封の箱には、「Sub-ice」(氷の下)というラベルが貼ってあるものがあった。掘削ドリルが氷を突き抜けてから、その下の地面をさらに3.5メートル掘って採取した、土壌部分のサンプルだ。

2018年末にステファンセン教授はこの「Sub-ice」の箱を空け、土壌サンプルの入ったガラス瓶を見つけた。最初はクッキーの瓶かと思って、「誰がこんなところに入れたんだ」と考えたという※3。ガラス瓶は30本あった。

そうしたサンプルはかつて、それより上にあった氷の部分のサンプルほど注目されなかった。しかしステファンセン教授らは、それが簡単には手に入らない貴重なサンプルだと気づいた。

2019年7月、このサンプルの一部が再び大西洋を渡り、米バーモント大学の地質学者バイアーマン教授の研究室に届いた。同じ研究室のクライスト氏は「クッキーの瓶」を空けたときに、「60年前の刺激臭が部屋に広がった」と振り返る※4。掘削用の穴がふさがるのを防ぐために注入されていた、ディーゼル燃料のにおいだ。

キャンプ・センチュリーの氷床コアに含まれていた土壌サンプルを開封するバイアーマン教授(右)ら Credit: Paul Bierman, CC BY-ND

このサンプルを調べた結果、植物の化石が見つかったのである。その保存状態は非常に良く、クライスト氏によれば「まるで昨日まで生きていたように見える」という※2

国際共同研究チームによるサンプルの分析には、50年前には存在しなかった最先端の方法が使われた。たとえばアルミニウムとベリリウムの放射性同位体の割合を調べると、地面が氷に覆われていなかった時間の長さを推定できる。その他の分析手法も駆使して、この土壌が最後に太陽光を受けた時期などを割り出し、過去100万年以内に少なくとも一度、氷床が完全に解けていたという結論に達した。

バーモント大学による解説動画

バイアーマン教授はこの土壌サンプルを、グリーンランドの氷床が過去の気候変動をどのくらい耐えてきたかを知るための「ロゼッタストーン」だとしている※3。 

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