信州大学特任准教授であり、法学博士・ニューヨーク州弁護士である山口真由さん。いわゆる"高学歴女性”として取り上げられることも多く、男性社会のなかで活躍する山口さんだからこそ感じる、日々の「なんでなの?」を連載で綴っていただきます。

今回は、メーガン妃によるイギリス王室における差別の激白と、渡辺直美さんをブタに見立てるという演出で東京五輪の演出統括者が辞任する…という2つの出来事をきかっけに山口さんが考えた「女性のステレオタイプ」についてですーー

眩暈がするほどヤバい“オリンピッグ”

「オリンピッグ」…この一言で東京五輪の開閉会式の演出を統括するクリエイティブ・ディレクターだった佐々木宏氏が辞任した。オリンピック延期が決まる前の2020年3月、五輪開会式のアイディアを出すブレインストーミングの場で、ピンクの衣装とブタの耳によって渡辺直美氏を「オリンピッグ」に扮させることを企画したらしい。「眩暈がするほどヤバい」という強烈な叱責を受けて、佐々木氏はその場で撤回して謝罪したという。

活動拠点をアメリカに移すことを発表したばかりの渡辺直美。インスタグラムのフォロワーは940万人、YouTubeのチャンネル登録者数は100万人で、老若男女問わず圧倒的な支持を得ている。[PHOTO]gettyimages
-AD-

森喜朗氏が女性蔑視とされる発言で東京五輪組織委の会長を辞任した後に、佐々木氏の1年前の発言が週刊文春に取り上げられる。

そこで、渡辺直美さんが「表に出る立場の渡辺直美として、体が大きいと言われることも事実ですし、見た目を揶揄されることも重々理解した上でお仕事をさせていただいております」とコメントを出した。続けて彼女は「なので今まで通り、太っていることだけにこだわらず『渡辺直美』として表現していきたい所存でございます」という。

そう、彼女は「体型を揶揄されたかわいそうな女の子」というステレオタイプの殻に閉じこもることを拒否した。そして「昔は体型を笑いものにするような依頼もあった。でも、闘って努力して、今の私はそのフェーズから抜け出して、太った娘ではなくて『渡辺直美』という唯一の存在になったの。引き戻されたくない。さらに力をつけていく」という趣旨のメッセージをYouTubeで出す。そこには、ユニークでパワフルな「渡辺直美」という存在をあきらめたくないという彼女のプロフェッショナリズムがあるのだろう。