2021.03.25
# 鉄道

地方鉄道は今後も必要なのか?三陸沿岸の住民と鉄道関係者に聞いた「本当の声」

「命の道」三陸道開通で生活が変わった
川辺 謙一 プロフィール

三陸道は「命の道」

いま地方にとって重要なのは、鉄道よりも道路である。東日本大震災で鉄道や港湾が破壊されたとき、被災地に緊急物資を運んだのは道路だった。

国は、震災直後に東北自動車道を約1ヵ月で開通させ、そこから三陸沿岸に向かう道路を切り開く「くしの歯作戦」を決行し、被災地の多くの命を救った。その後防潮堤の建設などの復興事業や、地域の基幹産業である漁業を支えたのも道路である。

その点三陸道は、地域に欠かせない動脈として機能している。この道路では、復興事業に使う重機を載せたトレーラーや、海産物を運ぶトラックだけでなく、救急車や消防車などの緊急車両も通る。大船渡には、大規模な病院と三陸道を結ぶ専用道があり、そこを救急車が走っている。そう、三陸道はまさに「命の道」でもあるのだ

 

これほど重要なインフラを整備されては、鉄道の立場はない。しかも三陸沿岸の市町では震災以降人口減少が急速に進んでおり、少子化によって高校生の数も減っている。

だからJR東日本は、地元と協議したうえで、三陸地方の鉄道をすべて復旧させることを断念したのであろう。同社は、気仙沼線や大船渡線の被災区間をBRT(バス高速輸送システム)として開通させ、山田線の一部(宮古・釜石間)を自社路線網から切り離し、三陸鉄道や沿線自治体に移管した。

鉄道がこれほどきびしい状況に直面していても、多くのメディアは三陸鉄道の復旧や取組みを繰り返し報じ、ときに感情に訴えるように伝える。この状況に対してある鉄道関係者は「エモーションやノスタルジーでは鉄道は動かない」と指摘し、次のような本音をもらした。

「利用者が少ない鉄道を廃止しようとすると、地元は反対する。そこでふだん鉄道を利用しているかと聞くと、利用していないと答える。これでは鉄道は残らないですよ」

なぜ地元の人は、ふだん利用しない鉄道を残そうとするのか。それは日本特有の交通の歴史が関係していると考えられる。

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