『スター・ウォーズ』が描く「フォース」とは、結局なんだったのか?

スターウォーズサーガの光と闇
現実には存在しない架空の歴史が、なぜこんなにもファンの心をつかむのかーー。『スター・ウォーズ』サーガの魅力を、『東大教授が教える日本史の大事なことだけ36のまんがでわかる本』の漫画原作を手掛ける堀田純司氏が、「歴史」に注目して考察する。

想像力が生み出した事典

アルゼンチンの作家、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの小説に、架空の事典が登場する短編があります。それは私たちの歴史とは違い「唯心論」にもとづいた世界の膨大な記述です。

私の勝手な想像なのですが、この小説の元ネタは19世紀に刊行された「アップルトンのアメリカ人名事典」(Appletons' Cyclopadia of American Biography)ではないかと妄想しています。

この事典では不幸なことに、項目を多く書けば書くほどギャラが出た。その結果、原稿料を稼ぐために架空の人物をでっちあげた執筆者が現れ、現実には存在しないキャラクターが紛れ込んでしまったのです。

 

その記述は数十年にわたって流通し、引用され、現実と混じりあってしまった。そんな形で虚構が命を持ってしまった理由は、ひとつには「架空の記事があまりにもそれっぽかった」から。

想像力が生み出した記事は人の欲望により忠実で、現実よりおもしろかったためではないかと思います。

『スター・ウォーズ』サーガの光と闇

THE STAR WARS BOOK はるかなる銀河のサーガ全記録』もまた、人の想像力が生み出した巨大の歴史の事典。ジョージ・ルーカスが1977年に生み出した、あの銀河の記録です。

『THE STAR WARS BOOK はるかなる銀河のサーガ全記録』(講談社)より

その世界観を構築するために、かつてルーカスは、ほとんど神経衰弱になるまで心血を注いだそうですが、現在でも世界最高の才能と資金が集まり、その世界はどんどん拡がっています。

本書はEP1『ファントム・メナス』からEP9『スカイウォーカーの夜明け』までを中心にして、スピンオフをも網羅したその歴史の「全記録」です。

『THE STAR WARS BOOK はるかなる銀河のサーガ全記録』(講談社)より

「遠い昔、はるか彼方の銀河系で」。

『スター・ウォーズ』のサーガの中心をなすのは光と闇、自由を抑圧する帝国とそれに抵抗する反体制運動の人々の物語ですが、必ずしも善と悪の明確な、二元論の世界観ではありません。

いやEP1からEP9までの「ナンバリングタイトル」は、いわゆる「勝者の歴史」であって、帝国は悪、フォースのダークサイドは死と破壊をもたらす暗黒の欲望という印象が強い。しかしその戦いの帰着点は「長い争いの果て、最終的に光が勝利する」という二元論的結末ではなく、到達するのは「フォースのバランス」です。

光と闇の調和(ただし、これについてはライトサイドこそが自然状態であり、ダークサイドはその調和を乱す存在という説もある。『THE STAR WARS BOOK』52p「フォース」より)。

編集部からのお知らせ!

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/