パチンコで借金300万円、妻に土下座…知られざる「ギャンブル依存症」の恐怖

田中 紀子 プロフィール

この後、Yさんは借金問題から解放され、1年ほどギャンブルをやめたのだが、あまりの生きづらさから再び自助グループに繋がった。夫婦仲は最悪で、罪悪感に打ちのめされながらも心の中は不満だらけ、自分の何が悪いのかさっぱりわからなかった。

実は、私も借金だらけの生活から抜け出そうと、ギャンブルと買い物をきっぱり止め1年かけて借金を清算したが、借金が無くなった瞬間に「もう死のう」と思った。借金さえなくなれば問題は解決すると思っていたが、困っていたのは生き方そのものだったのである。

Yさんも承認欲求が強く、なんでも「一番でいたい」という間違ったプライドで自分を苦しめ、それでいて自信がなく自尊心が低かった。この後、Yさんは自助グループに繋がり続け、回復することができた。現在では「NPOアスク認定 依存症予防教育アドバイザー」の資格もとった。

Yさんの経験は決して特殊な話ではないことがお分かりいただけたはずだ。むしろ「えっ?これが依存症なら自分も依存症かも?」と思われたかもしれない。

マスコミでは「家1軒分なくした」「横領事件を起こしても止められなかった」などというかなり重症化した人の話ばかり取り上げられるが、実際にはYさんのような借金を1~3回位繰り返して気づく人が多い。

そしてYさんの体験談で分かるように人がギャンブル依存症に陥る背景には、借金ができる環境/ギャンブルができる時間/打ち込んでいたものがなくなった喪失感 /承認欲求が強い/嫌なことを忘れられる/ギャンブル場が居場所になっている、など人によって様々なものがある。ギャンブル依存症から回復するには、この背景に向き合っていくことが非常に重要である。

 

回復とは「回復し続けること」

ではギャンブル依存症からの回復とは何を指すのか。

前述したように私たちは脳に回路ができている状態なので、山あり谷ありの人生で谷がやってくると、ふっとギャンブルでストレス解消をしたくなってしまう。この衝動はなくなることがないのだ。

正直、依存症者でもギャンブルを一定期間やめることはできる。人によっては4~5年やめ続けることも可能だ。けれども油断が続き、このくらいなら大丈夫だろうと再び手を出してしまうとあっという間にやめられなくなってしまう。再発はたいていの場合、最初に抜け出した時よりもひどい状態になる。

つまり回復するとはその状況を保ち続ける、回復し続けることを指すのだ。止まったから「はい、おしまい」では決してない。これが「回復はあるが完治はない」と言うゆえんである。

自分の心癖にはどんなものがあり、思い込みや、認知のゆがみ、さらには不寛容さや自分攻め、罪悪感などで自分で自分を苦しめ追い込んでしまっていたものが何だったのかをつきとめ改善していく必要がある。こう書いてしまえば簡単そうに聞こえるが、自分の間違いを認め正していくことは決して楽ではない。

依存症の回復プログラムはあまり知られていないが、自分の過去に向き合い、傷つけた人に謝罪をし、同じ問題を抱える人のサポートを生涯に渡ってやり続けるのだ。こういった一連の行動で回復を維持することができる。

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