デビュー作『法廷遊戯』で第62回メフィスト賞を受賞、ミステリランキングを席巻し話題になった、弁護士作家の五十嵐律人さん。待望の2作目『不可逆少年』が発売された。

今作の主人公は若き家庭裁判所調査官の瀬良真昼(せら・まひる)。“どんな少年も見捨てない”そう決めて彼らと向き合ってきたはずだったが、狐面の少女が犯した凄惨な殺人事件を目の当たりにして、信念は大きく揺らぐ。
「あいつが死んだ理由を教えてあげる――子供を甘くみたから」

なぜ第2作で少年犯罪を題材にしようと思ったのか。今年2月に国会に改正案が提出された少年法についての見解も交えつつ、『不可逆少年』への思いや見どころを伺った。

「少年法」は厳罰化されるべきなのか

―今年2月19日の政府の閣議決定により、18~19歳を「特定少年」と定めて一部厳罰化する内容の、少年法の改正案が国会に提出されました。現役弁護士として、五十嵐さんご自身は「厳罰化による犯罪抑止」を目指す方針については、どのようにお考えでしょうか。

五十嵐:18~19歳の「特定少年」について、1.刑事裁判にかけられる対象事件が拡大されることと、2.一部の実名報道が可能とされることが、今回の改正案の大きな方向性です。

1.については強盗などもその対象に含まれていて、「万引きをして逃げようとしたら店員に捕まりそうになったので飛び膝蹴りを喰らわせた」といった事案(事後強盗)も刑事裁判にかけられる可能性があります。

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もちろん、軽微な事件は対象から外せる規定になっていますが、どこまでを重大事件に含めるのかは難しい問題ですよね。改正前の少年法の枠組みであれば長期の少年院送致になった事案が、刑事裁判にかけられることで執行猶予に付されるケースもあると思うので、一概に厳罰化とも評価できないでしょうし。

「厳罰化による犯罪抑止」の是非は、犯罪抑止と更生のどちらに重きを置くかの問題で、「特定少年」の場合は前者に天秤が傾きやすいという考え方自体は概ね理解できます。

2.については、少年事件特有の、「被害者の名前は報道されるのに、加害者の名前が伏せられるのはおかしい」「加害者の顔を出さないなら、親の顔を晒せ(嫌なら加害者の顔を出せ)」といった意見を主にネット上で見聞きします。

しかし、まず先に「被害者の名前を報道したり、加害者家族を特定する必要があるのか」を検討するべきだと思います。それを抜きにして議論が進むのはピントがずれている気がします。実名報道の是非自体は、やはり社会的制裁と更生のどちらに重きを置くかで決まる問題でしょう。