約13年間のOL生活に終止符を打ち、2014年にライターに転身。2020年のデンマーク留学を期に、同年7月から活動拠点をフィンランドに移した小林香織さんの連載。デンマークで暮らすなかで同国の生殖補助医療に強く興味を持った小林さんは、これまでに、精子・卵子提供により50歳で長女を出産したカーンさん、精子提供により生まれた女性・エマさんを取材してきた。

本記事では、同国で暮らすレズビアンのMerete Damgaard Mærkedahl(メレーテ ダムゴー メアケダール)さん(39歳)と彼女のパートナー・Anna Windfeld(アナ ウィンドウィールド)さん(31歳)の生殖補助医療の経験を、メレーテさんへのインタビューにより紹介する。

ふたりの間には、第三者からの精子提供により誕生した5歳の長女と3歳の長男がおり、4人家族としてコペンハーゲンで暮らしている。子どもを持つにあたり、彼女たちが利用したのはデンマークにある世界最大の精子バンク、クリオス・インターナショナルだ。今回は同社にも取材を試み、デンマークの生殖補助医療にまつわる周辺情報にも触れた。

事実婚で10年連れ添い、2人の子どもを持つ

メレーテさんは28歳のとき、仕事を通じてアナさんと出会った。女優として働くメレーテさんと現場でアシスタントをしていたアナさん。実はふたりの交際をアシストしたのは、アナさんの母だった。彼女もまた女優であり、メレーテさんと面識があったのだという。

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「義母(アナさんの母)は、私に『アナもレズビアンだから親しくしてみたら?』と勧めてくれ、私たちは交際するようになったんです。デンマークではLGBTのパートナーシップが正式に認められているし、偏見を持つ人も少ないので、義母は快くサポートしてくれたのだと思います」(メレーテさん)

メレーテさんにとって、アナさんは3人目となる女性のパートナー。メレーテさんは20歳のとき、田舎町から都会に引っ越したことをキッカケにレズビアンの存在を知り、自身がレズビアンであることを自覚したそうだ。それから2人の女性と付き合ったが長続きせず、アナさんに出会い、ようやく人生を共にしようと思えたという。

すでに連れ添って10年になるふたりだが、現在も事実婚(同棲しているが法律婚はしていない状態)のまま 写真/メレーテさん提供


法律婚をしない理由について尋ねると、「結婚式をするのに費用がかかるから」とのこと。3年ほど前にメレーテさんからプロポーズし、アナさんの了承を得ているものの病気やパンデミックなどの要因が重なり、法律婚、及び結婚式を見合わせている状態なのだという。

デンマークでは「子どもを持つなら法律婚をするべき」といった日本のような概念はなく、法律婚をしないまま子どもを持つカップルも多い。ふたりもまた、その一組だ。

ふたりは「他のファミリーと同じように家族を持ちたい」という理由から、精子提供を通じて、ふたりの子どもを持った。レズビアンカップルの中には、異性の友人の協力を得て子どもを持つ人もいるが、なぜ彼女たちは精子バンクの利用を選んだのだろうか。

「異性の友人にお願いすることも考えたのですが、不妊治療や親権などをめぐる混乱が起きるかもしれない危険性を恐れて、結果的に精子バンクを利用するのが適切だろうと考えました」(メレーテさん)