「三体問題」はなぜ難しいのか? 一体問題、二体問題との本質的な違いとは

絡まり合った方程式
浅田 秀樹

絡み合った数式

残るのは、万有引力の逆2乗則に関わる部分です。そうです、距離の2乗に反比例する箇所です。

この距離とは、2つの天体の間の距離です。天体間の距離がずっと変わらなければ、この距離は定数になります。

図の距離の表式を見てください。2つの天体の位置が混ざり合っています。ここからは、どちらかの天体の位置の部分ともう一方の天体の位置の部分に分けられないのです。

そして、もうお分かりかもしれませんが、天体1の加速度イコールの数式の右辺には、天体1と2の間の距離(を2乗して逆数の形にしたもの)および天体1と3の間の距離(を2乗して逆数の形にしたもの)が存在します。

天体1の加速度に対する数式、つまりその位置に対する微分方程式は、その天体1の位置だけでは閉じずに、それ以外の天体2の位置と天体3の位置も含んでいるのです。

結果として「その方程式を天体1の位置だけ先に解いて、次に天体2の加速度に関する方程式を、その天体2の位置だけに対して解いて、最後に天体3の加速度の式に対する解として天体3の位置だけを求めること」は、一般的には無理なのです。

無理だと書いた理由はこうです。仮に天体1の加速度に対する式を解くとしましょう。つまり天体1の位置を表す関数を見つけようとします。その方程式には天体2の位置(を表す関数)と天体3の位置(を表す関数)が含まれています。最初に天体1に関する方程式を解こうとしている段階では、残りの天体2に対する方程式、および天体3に対する方程式は放置したままです。

つまり、天体2と天体3それぞれの位置の関数の形を、この時点の我々は知りません。天体2と3の位置を表す関数が不明のままでは、万有引力に現れる距離も不明です。運動方程式の右辺の関数が不明のままでは、それを満たす解(この場合は、天体1の位置に相当する関数)を見つけることは不可能です。

天体1の位置を表す関数以外の部分が既知である方程式ならば、その未知関数(天体1の位置)を見つけることは原理的に可能でしょう。しかし、求めたい量(この例では天体1の位置)以外にも、未知の量が同じ方程式の中に共存しているのです。

これを連立微分方程式とよびます。求めたい量に対して微分操作を含む方程式であり、求めたい複数の変数に関して、独立せずに複数の方程式が絡み合っているものです。

ニュートンの時代の科学者にとって、その絡み合いはとても解ほぐせるようには思えませんでした。しかし、この複雑な三体問題に果敢にも挑戦する人たちが登場します。

それは18世紀の数学者オイラー、ラグランジュ、そしてポアンカレといった天才たちでした。彼らがどのようにこの問題に挑み、どんな答えを得たのか。結論を言えば「三体問題」はいまだに完全には解決されず、現在でも科学者がその答えを探し続けています。

1609年に観測データからケプラーが惑星運動の法則性を見出して以降、400年に及ぶ人類のこの難問への挑戦にご興味をお持ちの方は、ぜひ『三体問題』をご覧ください。

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