昨年7月に急逝した三浦春馬さんの主演映画『天外者』は、2020年末の公開以来、各地でロングラン上映されている。くり返し見るファンも多く、2021年3月15日には、ノベライズ本も発売された。筆者は、天外者へのファンの思いやムーブメントを記事にしていたところ、「バリアフリー上映がある」と知った。どんな工夫があるのだろう?医療・福祉の取材をする中で、ヘルパー2級の資格を取得し、子育て中でもあり、ダイバーシティを生きる筆者としては、体験してみたい。東京・田端にあるバリアフリー映画館「シネマ・チュプキ・タバタ」を訪ねた。

(c)2020映画「五代友厚」製作委員会
東京・田端にある「シネマ・チュプキ・タバタ」撮影/なかのかおり
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森の中をイメージした映画館

JR田端駅から、歩道橋のスロープを使って道路に降り、商店街を少し歩くと、スーパーの隣にバリアフリー映画館「チュプキ」があった。かわいらしい外観の、小さなビルだ。事前にネット予約しておいた名前を告げ、1500円を支払う。コロナ禍は人数を抑えているという。ロビーの天井には、木の絵と支援者の名が描かれ、バリアフリーのトイレもある。

順番に好きな席に座れるということで、2番目に案内された。映画館は、森の中のようだ。「チュプキ」はアイヌ語で、月や木もれ日など「自然の光」を意味するという。芝生の床にクマのぬいぐるみ、スピーカーの上には鳥の巣がある。ふかふかのいすのひじ掛けには、音声ガイドのジャックがつけられている。後ろの壁の前には、固いいすがあり、座り心地を試す人もいた。車いすでも入れる。

「森の映画館」がテーマだ 撮影/なかのかおり

親子鑑賞室も見せてもらった。カーテンを外すと、小窓からスクリーンが見られる。チュプキは、赤ちゃんや小さな子連れでも一般席で鑑賞できるが、上映中に泣いたりぐずったりしたら、親子鑑賞室へ移動できる。ベビーカー1台と大人が一人、入れるほどの広さだ。大勢での鑑賞や、暗い室内・大きな音が苦手な人にもいい。完全防音で、照明と音量は調整できる。

親子だけで見られる鑑賞室もある 撮影/なかのかおり

個別に聞いているわけではないが、2割ぐらいはハンディのある人が来ているという。遠くから、定期的に訪れる人もいる。

字幕があるとわかりやすい

比較するため、一度見た『天外者』を選んだ。一番に感じたのは、字幕があって、映画が見やすかったということだ。聞こえない人のための工夫は、誰にとってもやさしく、役立つということを実感した。

『天外者』とは鹿児島の方言で「すごい才能の持ち主」のこと。五代友厚と坂本龍馬が駆け抜けた時代を、文字をみながらしっかり理解することができる (c)2020映画「五代友厚」製作委員会

大きな映画館で初めて見た時は、歴史上の人物名や、時代の流れに、追い付けない部分があった。字幕があると、理解しやすい。三浦春馬さん演じる主人公・五代友厚の人生に入りこみ、野心みなぎる若い頃から、辛い別れを経て社会を変えようとする中年期までの成長過程がよくわかった。

バリアフリー上映に情熱を傾けてきた、代表の平塚千穂子さんに話を聞いた。