末期がんを患う35歳の人気料理研究家「人生のどん底からの抜け出し方」

14万部を超えるベストセラー『考えない台所』の著者である、料理研究家の高木ゑみさん(35歳)。自ら主宰する東京・中目黒の「ガルシェフ料理塾」は、1回のレッスンで15~18品も作ってみせる熱血指導ぶりが評判を呼び、なかなか予約が取れないほどの人気を博していました。

ところが昨年、ゑみさんを次々に困難が襲います。まず、コロナのために塾を開くことができなくなる、当時住んでいた沖縄で空き巣に入られる、知り合いに裏切られる。これらをすべて乗り越えたところで待ち受けていたのが、まさかの末期がんの宣告でした。


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高木ゑみ 料理研究家・台所改善コンサルタント。1985年、東京都生まれ。イギリス、オーストリア、アメリカへの留学で世界各国の料理に出会い、大学在学中から様々なレストランで調理を学ぶ。マカロン由香さんの料理教室、出張料理アシスタントを務める。料理教室「ガルシェフ料理塾」を主宰しながら、メニュー・商品開発、出張料理、企業とのタイアップなども精力的に行う。著書に『考えない台所』など。
ブログ:https://ameblo.jp/laterier-de-emi/
インスタグラム:https://www.instagram.com/emi.takagi/


──ここからは昨秋、突然の病を得てからのお話を伺います。始まりは腰痛だったそうですね。

高木 もともと疲れが肩こりや腰に表れるタイプだったので、ああ、また腰痛だ、ちょっと働き過ぎちゃったかな、ぐらいにしか思わなかったんです。整骨院に通いつつ様子見していたのですが、咳やくしゃみをするとあばらの辺りが痛くなるなど、体に痛みが広がってきました。

整形外科で診てもらったところ、「ストレートネックで背骨も少し曲がっていますよ」ということで、首を延ばしたり、低周波の電気を流したり。でも一向によくならない。それどころか、しゃがむのも痛くて辛いし、寝返りも打てなくなってしまいました。

そこで内科のクリニックでレントゲンを撮ると、先生の顔色が変わりました。肺にドーンと大きな影が映っている。素人の目にも、それは肺にあってはいけないものだとわかりました。

すぐに呼吸器系の病院を紹介され、検査入院したのですが、肺の影は悪性のもの、つまりがんでした。さらに、がんは頸椎、胸椎、背骨、リンパ節、腎臓、脚、脳……多過ぎて、説明を聞いても頭に入ってこなくなるほど全身に転移していることがわかりました。特に、首、胸椎、脳がひどい状態で、即刻治療開始です。

私は検査だけなら1~2日で済むと思ったので、ショーツを2枚しか持っていかなかったんですよ。それが1ヶ月以上の入院生活になったものですから、もっと着替えを持ってくればよかったと、どんなに後悔したことか(笑)。

──そこですか(笑)。いつもの腰痛だと思っていたら、がんの宣告。どう受け入れましたか。

高木 もう、びっくりしかない。「先生、私は今、ステージいくつなんですか」と聞くと、「ステージ0が何もないとして4が一番ひどいとしたら、ステージ4ですね」と言われ、「ひえ~っ」としか言葉が出てこないんですよ。

喫煙していないのになぜ肺がんになるんだ、どうして気づかなかったんだ……腑に落ちない思いがグルグルと頭を巡りましたが、すぐに8歳の息子のことを考えました。

そうだ、子どものために絶対に治さなくてはいけない。前だけを向いて、全力で治療しようと決意したんです。そのためには、料理塾の生徒さんにも、仕事関係の人にも、友人にも、そして息子にも、これは包み隠さずカミングアウトしよう、そのほうが息子も安心するし、治療のためにもいいはずだと思いました。

気持ちが切り替わると、行動は早かったです。翌日には病室からインスタライブで、今後の治療に前向きに、全力で向き合っていくことを明るく報告。
息子には、病院の臨床心理士さんの助けを借りながら、状況を説明しました。子どもには絶対に隠さないことがお薦めとのこと。隠そうとすると嘘を重ねることになるから、訳がわからなくなってしまう。そうすると、子どもは敏感に感じ取って不安になってしまうのだそうです。

 

息子も私に何かあったと察しているから、不安だったようです。どんな病気で、どういう治療をするか、私自身がきちんと話したことで、息子はかなり落ち着いた様子でした。

──治療は辛くなかったですか。

高木 治療は抗がん剤と放射線治療なんですが、やはり抗がん剤は少し遅れて副作用がやってきます。食いしん坊の私が、何も食べられなくなる。大好きなフランス料理のことも、考えると気持ちが悪くなる。お水を飲んだだけでも吐いていました。

 

そんな辛いときも包み隠さず、「辛い(泣)」とインスタで弱音を吐く。でも、吐き気にもすぐに慣れてしまって、立ち直る。放射線を当てたところの毛が抜けてしまうと、「はげた~、きゃ~っ」と悲鳴を上げる。でも、すぐに「でもウィッグがあるしっ!!」って(笑)。

そんなふうだから、笑いの絶えない病室でした。郊外の病院なので、まだコロナの影響もそこまでは及んでいなかったため、息子と会うこともできました。退院した日から、中学生以下の子どもの面会はできなくなりましたので、私はツイていたと思うんですよ。現在は全館面会禁止になっていますから、お母さんやお子さんの気持ちを思うと涙が出ます。

がんだけでなく、孤独との闘いにもなりますよね。そんなときこそ、SNSで人とつながるというのは、非常にいいですよ。私も同じ病気の人とつながって励まし合ったり、思いがけず、昔の知り合いがインスタを見て応援してくれていることがわかったり、ずいぶん助けられました。

【写真】末期の肺がん、約3ヶ月の闘病生活のリアル
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