バイデン政権でどうなる中東? 池上彰と元アラビスト外交官が深堀り解説!

池上彰×中川浩一(後編)
池上彰×中川浩一

「世代交代」と「脱石油依存」がキーワード

池上 昨年8月以降、イスラエルとの国交正常化に合意したアラブ4ヵ国(アラブ首長国連邦、バーレーン、スーダン、モロッコ)は、過去4回にわたる中東戦争で、いずれもイスラエルと直接戦っていない国ですよね。だから、イスラエルとの国交正常化にもそれほど大きな抵抗がなかったと考えられます。

中川 はい。最後の中東戦争は1973年ですけど、もう50年近く経っているので、若い人たちはイスラエルとの戦争を知らないんです。「世代交代」が、イスラエルとアラブ4ヵ国の国交正常化の背景にあると思います。

 

池上 そう、まさに「戦争を知らない子供たち」ですよね。

中川 特に湾岸諸国の指導者は、サウジアラビアのムハンマド皇太子がその代表格ですけど、30代と大きく若返って、これまでの古参リーダーたちとは考え方が大きく変わっています。それともう一つ、湾岸諸国も「脱石油依存」を図って、産業を多角化しなければ生きていけないということがあります。なので、ハイテクの集積地であるイスラエルとディールする必要がある。そういう意味でも中東は変わってきています。

池上 昔のように、「アラブとイスラエルは対立している」という固定観念で見ると、突然アラブとイスラエルが国交正常化というニュースが流れると、どういうことだろうとなってしまうんですけど、以前とは状況が全く違いますよね

池上彰氏

他にも、たとえばドバイって、日本でテレビを通して見ていると高層ビルがたくさん建っていて、やっぱりオイルマネーはすごいなって思いますけど、そうじゃなくて、ドバイの首長が世界中から投資させているんです。オイルマネーじゃなくて、海外から投資を呼び込むことで、あの街を作っている。あるいは、アブダビは最近、再生可能エネルギーにものすごく力を入れています。だから、ちょっと前の見方で今の中東を見てしまうと危険です。

中東で、民主主義と安定が両立しないジレンマ

中川 その湾岸諸国では、最近までカタールとサウジアラビアが断交していたのですが、今年1月、バイデン政権発足前に、それを解除して国交を正常化しました。それまで3年半も断交していたのは、カタールが、中東の民主化を煽るような動きをしたからなんです。10年前の「アラブの春」がきっかけです。民主化するのは良いことのようですが、中東って民主化すると、イスラム過激派などが勝利する可能性があるので、不都合な面もあるんです。

池上 アラブの人たちを自由にさせたら大変なことになるという人もいます。独裁政治が続いてきたアラブ諸国で民主主義を定着させるのは、ものすごく難しい気がしますね。

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