池上彰氏(左)、中川浩一氏(右)

バイデン政権でどうなる中東? 池上彰と元アラビスト外交官が深堀り解説!

池上彰×中川浩一(後編)
中東をたびたび取材しているジャーナリストの池上彰氏と、元外交官で、アメリカの中東外交に詳しい中川浩一氏(『総理通訳の外国語勉強法』著者、現・三菱総合研究所主席研究員)が、バイデン政権下の中東の行方について徹底討論。

(前編はこちら

中東は日本にとって他人事ではない

中川 2020年のエネルギー白書によれば、2018年度の、日本の中東への原油依存度は88.3%です。一時期(1980年代後半)は70%を下回っていたんですけど、また増えてきました。日本にとって中東はそれだけ重要であるにもかかわらず、日本人の中東への関心はまだまだ低いですよね。

もっとも、それは無理もない話で、日本で中東が大きなトピックになるのは、10年に1回という説があります。1991年の湾岸戦争、2001年のアメリカ同時多発テロ事件(9.11事件)、2011年の「アラブの春」と来て、2021年がどういう年になるか。今年は、中東に要注目だと思います。

 

池上 そろそろ、また何かが起きますかね?

中川 アメリカでバイデン政権がスタートしましたが、前のトランプ政権とは大きく政策が変わるので、良くも悪くも変化の年になりそうです。アメリカの民主党が政権を握ると、基本的な価値、すなわち民主主義とか人権とか平和などを重視しますから、紆余曲折はあると思いますが、最終的には、中東に和平が到来するのを期待したいですね。

池上 トランプ前大統領が、トルコのサウジアラビア総領事館で発生したサウジアラビア人ジャーナリスト殺害事件(カショギ事件)で、事件に関与したといわれるサウジアラビアの皇太子をしっかり追及しなかったり、あるいはイスラエルのネタニヤフ首相と緊密だったりしたのに比べると、バイデン政権では、中東への対応がガラリと変わりますよね

池上彰氏(左)、中川浩一氏(右)

アメリカとイランの関係が、中東の行方を決める

中川 私は、2008年から2011年まで、オバマ政権の時代に、アメリカの日本大使館に勤務していました。1979年のアメリカ大使館占拠事件以降、根深い対立が続いていたアメリカとイランですが、その当時、中東になんとか安定をもたらしたいオバマ大統領がイランへ融和メッセージを出していたので、オバマ大統領がテヘランに行って、イランの指導者と握手する「歴史的瞬間」のことも考えながら仕事をしていました。他国の外交官たちとも、もしその情報をつかめなかったら外交官失格だねと話していたくらい、それは現実味を帯びていたんです。

池上 イランの大統領選挙とアメリカの大統領選挙は、どちらも4年周期で、イランの選挙が約半年、後ろにずれているんでしたね。あのときは、オバマ政権発足半年後に行われたイランの大統領選挙で、強硬派のアハマディネジャド大統領が勝利したので、結局、融和ムードは一気に萎んでしまいました。

中川 そうなんです。今年も、イランの大統領選挙が6月にありますが、それまでにバイデン政権がイラン核合意に復帰できるかが、まずは最大のポイントです。もし、6月までに復帰できず、イランで穏健派が負けて、強硬派の大統領が誕生してしまうと、その後のアメリカとイランの関係はわからなくなります。

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