2050年に「原発ゼロ」は達成可能なのか?廃止派も推進派もザワつく「経産省の思惑」
なぜ電力構成は重要なのか
今日は、経済界や環境問題関係者の間で沸騰している「2050年の電源構成」の議論を検証したい。
経済産業省・資源エネルギー庁が昨年12月に提示した原案は、(1)太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーを50~60%、(2)水素やアンモニアを混ぜて燃やす火力を10%、(3)その他のカーボンフリー火力と原子力をあわせて30~40%とし、電力分野のカーボンニュートラルを実現するというものだ。
ところが、このたたき台に賛否が百出している。「原子力発電の独立した構成比率を示さなかったのは、原子力ゼロも視野に入れているのではないか」と疑心暗鬼になる向きがあれば、「再エネの60%は不可能だ」という声、逆に「再エネを80%とか100%にするべきだ」といった意見もあるのだ。
そこで、現在の状況を整理したうえで、妥当な落としどころと実現に向けた課題を考えてみたい。二酸化炭素(CO2)を出さない技術を取り入れることで火力発電を利用し続けながら、カーボンニュートラルの実現を目指す日本独自の戦略に潜む障壁も浮かび上がってくる。

まず、なぜ電源構成が重要なのかを押さえておこう。
菅義偉総理が昨年10月26日の所信表明演説で、「2050年のカーボンニュートラル」を宣言し、気候変動対策(脱炭素化)が日本の最優先課題のひとつに浮上した。
国立環境研究所によると、日本の直近(2019年度)の二酸化炭素(CO2)の排出量(速報値ベース)は11億600万トン。このうち発電所などのエネルギー転換部門は39.1%(電気・熱配分前)と、工場などの産業部門の25.3%、自動車などの運輸部門の18.0%を抑えて最大である。このため、発電の構造転換が気候変動対策の肝になってくるわけだ。