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ラストバンカー・西川善文「こんな行為がお客の心に不信感の種をまく」

西川善文『仕事と人生』(9)
2020年9月に逝去した三井住友銀行元頭取・日本郵政元社長の西川善文氏は、2013年から翌年にかけ、記者と編集者を相手におおいに語ったことがある。仕事とはどのようにするべきなのか、どんな人が成果をあげるのか。語られたことは、長年、大組織の中で人に揉まれ、人を観察し、お客と相対し、トップとして人を率いた経験と、持って生まれた眼力によって培われた、西川善文ならではの奥深いものだった。死去から半年経った3月に、それを一冊の本『仕事と人生』として刊行することになった。「ラストバンカーの遺言」というべき本書から、どんな時代も変わらぬ仕事術を、数回にわたりご紹介したい。

一方的にしゃべってはいけない

いかなる事業でもお客さまというものがある。このお客さまに対する応対の仕方は大事であり、その能力がビジネスで結果を出すときに大きな鍵を握っている。

お客さまへの対応の要諦を一言で言えば、「お客さまを知る」ということだ。だから、こちらがあまり一方的にしゃべってはいけない。お客さまの話を引き出し、それに応じて話を進めていく。あるいは、世間話でも何でもいいのだが、他の話をしながら自分のお願いしたいこと、自分の言いたいことをその間に入れていく必要がある。自分のお願いしたいことだけをまくし立てても迷惑がられるだけである。

ところが、ノルマの重圧に押されて「とにかく今月、お願いします」と「お願いします」を繰り返す人がいないではない。これはあまり好ましくない態度である。

 

銀行の営業を例に取れば、預金が欲しいとストレートにお願いするよりは、まず相手の様子を見て、相手の資金量はどれぐらいかという見当をつける。そうでなければ、どれだけの金額をお願いしていいのかわからない。

貸し出しについても同様である。資金需要がどのくらいあるのかということをしっかりと把握しなければならない。また、担保があるのか、ないのか。金利はどのくらいならいいのか。こういった条件も貸し出しの場合は重要だ。資金需要と貸し出し条件などの先方のニーズを把握した上で、現在の借入金額を勘案し、お願いできるギリギリのところまでお願いをする。これが当たり前の対応である。

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