もともとは一薩摩藩士であった彼は、維新後、明治新政府の役職を経て実業家に転身。造幣局の設立、鉱山の開発、紡績業の普及をはじめとした数々の事業を起こしたのち、明治11年(1878年)に設立された大阪商法会議所(現・大阪商工会議所)の初代会頭に就任するなど、大阪財界の立役者として活躍した。
映画『天外者』は、彼が世に出る前の若い時代から始まるが、幕末の志士・坂本龍馬、のちの三菱財閥総裁・岩崎弥太郎、そして初代総理大臣を務めた伊藤利助(博文)との藩を超えた友情が描かれている。

「映画は史実をもとにしたフィクションですが、五代が長崎の海軍伝習所で学んでいた時代のどこかで、龍馬、弥太郎、利助と出会わせたいなと。時代考証の先生から、五代の資料に残っていない空白の半年があるとお聞きしたので、そこで描けないかと……。
もちろん、時代劇なので史実に沿って書かなくてはなりませんが、史実に引っ張られすぎてしまうと出来事の羅列になってしまうので、その隙間に光を当てて、ストーリーを創り出していく。史実なら1行で終わるところに物語を見出すのが、歴史を書く醍醐味だと思っています。
私にとってのこの物語は、すべての価値観が変わりつつあった激動の時代を精いっぱい生きた若者たちの話です。コロナで上映がどうなるかもわからない時期だったので、ノベライズの出版は難しいと思っていましたが、今回、本を出せて良かったです。映画を見て下さったみなさんのお陰です。時間の関係で映画には入りきらなかった場面やエピソードも盛り込みました」
