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西川善文流仕事術「周りの目が厳しいときこそ一刻も早く結果を出せ」

西川善文『仕事と人生』(8)
2020年9月に逝去した三井住友銀行元頭取・日本郵政元社長の西川善文氏は、2013年から翌年にかけ、記者と編集者を相手におおいに語ったことがある。仕事とはどのようにするべきなのか、どんな人が成果をあげるのか。語られたことは、長年、大組織の中で人に揉まれ、人を観察し、お客と相対し、トップとして人を率いた経験と、持って生まれた眼力によって培われた、西川善文ならではの奥深いものだった。死去から半年経った3月に、それを一冊の本『仕事と人生』として刊行することになった。「ラストバンカーの遺言」というべき本書から、どんな時代も変わらぬ仕事術を、数回にわたりご紹介したい。

「三割でよし」と見切りをつける

バブル崩壊から二〇年にわたって不良債権の処理が続けられたが、煎じ詰めれば単純なことである。「ロスを出すか、出さないか」という問題だけなのだ。

もちろん不良債権といえども回収を極大化すべく努力しなければならないが、そればかりにこだわっていると前に進まない。したがって、ある程度のところで見切りをつけるしかない。たとえば、「これは三割回収すれば大成功だ」というふうに割り切る。そして、残りの七割は捨て、最大限の回収がなされたことにして終えるのである。そういう枠組みで取り組まないと、処理は前に進まない。いや、進まないどころか、こだわりすぎてグズグズしている間に、状況がいっそう悪化するケースは少なくない。典型的なのは担保物件の処分である。

債権回収において担保はきわめて重要な要素で、できるだけ高く処分したいと誰もが考える。しかし、「高く売りたい」「高く売りたい」と待っている間に、早く現金化しておけばそれを融資に回して得るはずだった金利分の損失が発生する。これだけでも大きい。最大限頑張って一割増えるか増えないかぐらいのことで時間をかけていると、増えた分がこの金利ロスで飛んでしまうことがあるのだ。

 

最悪の事態は、時間が経つ間に売れるものも売れなくなってしまうことだ。それは「回収できるはずのものが回収できなくなった」ことを意味する。実際、バブル崩壊では価格が大きく下がっているのに買い手のつかない不動産があった。一年前に一〇〇万円だった土地が五〇万円に下がっても、「まだ底を打っていない。一年後には二五万円に下がるかもしれない」とみんなが思ったら買うわけがない。当たり前のことである。

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