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大学教授の僕が、12歳の息子に「自分みたいな大人になるな」と話す理由

目の前の幸せを、大事にしてほしい

頑張っても報われない社会

うちには4人の子どもがいる。長男は12歳で末っ子は1歳。育児どまんなかの僕がずっとためこんできたことを今日は話そうと思う。

それは、「子どもたちにどうやって社会を語ればいいんだろう問題」だ。

僕は、最近よく、「俺のようになったらいけんよ」と子どもたちに言う。大学の教員は、研究者であり、同時に教育者だ。そんな人間が子どもたちに「俺のようになるな」と言っている。我ながら奇妙な話だと思う。

理由はなにか。それは、自分たちと同じ生きかたを押しつけても、きっと彼らは幸せになれない、と心底、思うからだ。

大学生のころ、「30歳で年収1000万円」とよく耳にした。それをふと思いだし、「いま、30歳だと、いくらくらいもらえるの?」と学生に聞いてみた。返事はこうだ。「600〜700万円くらいですかね」。僕が学生だったころから30年近くたつのに、平均年収が6〜7割? 衝撃だった。

受験勉強を勝ち抜け、そうすれば、いい大学、いい会社に入れて、賑やかな街でゆたかに暮らしていける――僕たち「団塊ジュニア」は、どの世代にも増して、この成功モデルを実践した。努力の先に待つのは幸福だ、未来のためにいまを犠牲にするのはしかたない、そう教わり、そう信じていた。

だけど、前を向く僕たちの後ろ側で状況はすっかり変わっていた。

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当時OECD加盟国中6位だったが日本の1人当たりGDPは、平成の終わりには21位に落ちた。世帯収入がピークだったのは平成9年だ。バブル崩壊後の平均実質GDP成長率は1%に届かず、いまでも設備投資は平成元年の水準におよばない。なにかの冗談か、と言いたくなるような衰退ぶりだ。

経済が弱れば雇用も細る。僕の属する45〜54歳の層を見てみる。平成元年には正規雇用者の25%しか非正規雇用者はいなかったが、平成最後の年には47%へとほぼ倍増した。これと歩調をあわせるように、貯蓄は減り続け、努力と成功の象徴だったはずの持ち家保有率も目に見えて低下した。

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