日本人が「田中角栄」を大好きかつ大嫌いであるワケ

【特別対談】真山仁×大西康之(前編)

新型コロナショックが襲う令和ニッポン――。

「失われた30年」が過ぎたこの国は、まだ昭和が続いている。総括が終わっていない、という意味において。

今、日本人が直視しなければいけない昭和の大事件、それはロッキード事件とリクルート事件である。

多くの人が知らない真相とは? 田中角栄とは、江副浩正とは何者だったのか?

今回、二大事件を扱った重厚なノンフィクション、『ロッキード』(文藝春秋刊)著者・真山仁氏と『起業の天才!』(東洋経済新報社刊)著者・大西康之氏の特別対談を実施。

事件の総括から見えてきたのは、「成り上がりが嫌いな国民性」と「異物の存在を許さない日本の空気」だった。

(構成:藤岡雅、写真:村田克己)

『起業の天才!』著者の大西康之氏(左)と『ロッキード』著者の真山仁氏(右)
 

「失われた30年」とは何だったのか

大西 真山さんの『ロッキード』(文藝春秋刊)には、日本という国が天才政治家の田中角栄をどう持ち上げて、どう落としたのかが克明に描かれています。ロッキード事件は、現代に重要なメッセージを送り続けていると思いました。

真山 ありがとうございます。『週刊文春』でこの連載を始めたのは、ちょうど平成が終わるというアナウンスが始まったころでした。私は小説の『ハゲタカ』シリーズを通して平成を描いてきましたが、バブル経済がはじけて景気が急落した当初は「失われた10年」だったのが、結局「失われた30年」となって、つまりまるまる平成という時代は、結果的に昭和の後始末をやっていただけでした。

私がずっと疑問に思っていたのは、「昭和は総括されたのか」ということ。銀行が抱えた大量の不良債権などを、税金を投入して処理をして、単に数字のつじつま合わせをしただけ。昭和に起きた本質的な問題の解決を、平成は先送りにしただけだったのではないか。

戦後の昭和(1945年~)はそれまで「政治の国」だった日本を、「経済の国」にしようと試みた時代でした。また底流に日米関係があって、ときどき、噴火口からものすごい問題がマグマみたいに飛び出してくる。その一つがロッキードでした。

事件の当時、私は中学生でしたが、大人気だった田中角栄総理が叩き落される様をみて、日本の政治はダメだと思った。小説は、新しい価値観を社会に与えて、民主主義の政治に大きな影響も与えることができる。ロッキード事件は私が小説家になる原点の一つだったんです。

また、田中角栄という魅力的な人物を自分なりに見つめてみたかった。ロッキード事件が起きた70年代は、昭和が最も熱かった時代です。当事者ではない人間がもう一度あの事件を振り返ることで見えてくる昭和の実像があるのではないか。そう思って取り組みました。

大西さんが『起業の天才!』(東洋経済新報社刊)で描かれた江副浩正も、リクルート事件で逮捕された起業家でした。昭和最後の疑獄ですね。ロッキード事件とリクルート事件は、歴史の線でつながっていて、昭和を知るうえで欠かせない事件だったと思います。

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