日本社会はアメリカ化するか? これからの経済・家族・福祉の姿

データで読み解く「日本の構造」
橘木 俊詔 プロフィール

自己責任化する福祉

第3の福祉国家型には、日本の経営者層と保守政治家が税金や社会保険料の負担増加を避けられず、経済の活性化にマイナスであると反対しているし、国民の多くもそれに同調しているので、ヨーロッパ型になるのは困難であろう。

国民がそう判断しているとの証拠は、福祉の財源になりうる消費税率を、ヨーロッパのように20%に上げる策に日本人は抵抗すると予想できるからである。

しかも日本人は福祉の恩恵を受ける人を好まない。なぜなら、そういう人は怠けていて、福祉にタダ乗りしているとみなす人が多い。

日本人の保守層は家族の美徳に頼る案を支持しているが、国民の多数派はそれに応じないと予想できるので、アメリカ型の自立主義に接近するのでは、と筆者は想定している。

自分の福祉は自分で面倒をみるべしとのいわゆる自立型に向かう可能性が高いが、それを貫徹すると低所得者を中心にして福祉から見放される人が出てくるので、さすがにそれでは悲惨になりかねないと多くの国民が思うだろう。

そこでヨーロッパの福祉国家の中でも低福祉・低負担の国々、あるいはせめて中福祉・中負担の国々に近い福祉国家型になることを望む人も結構いるだろうと予想できる。

換言すれば、北欧型の高福祉・高負担の福祉国家にはならず、アメリカ型の自立中心の国か、それとも低福祉・低負担(あるいは中福祉・中負担)の福祉国家か、のせめぎ合いの末の選択であろう。

コロナ禍はどうなるか

最後に、世界中を席巻している新型コロナウイルスが今後に与える影響を一言述べておこう。

世界を見渡すと、2つの大きな流れがある。

一つは、ロックダウンなどの強硬な手段を用いて、感染者の数を減少させる政策。

もう一つは、経済活動を優先させるため、そういう手段を用いずにのらりくらり予防対策をする。

どちらも人命を大切にする、すなわち一方は感染者の数を減らして死亡者を出さない、もう一方は廃業や失業を減らして経済苦の人を出さない、という目的では共通しているが、方法が異なるのである。

前者の代表としてニュージーランド、台湾、後者の代表としてアメリカ、ブラジルを挙げておこう。

日本はどちらだろうか。GoToトラベルなどの政策を見ていると、感染者の数を削減するよりも、経済活動を優先させる政策に傾いているように思える。理想は感染者を増やさず、同時に経済の劣化を防ぐ策であるが、なかなか両立は困難である。

そろそろワクチンの普及により、世界的なパンデミックは収束に向かうだろうが、その効果の出現には時間を要する。さらにいつまた新しい感染症が出現するかもしれない。

今回の経験を参考にして、学界、政界、経済界はどのような対策が望ましかったか、反省を含めて検証を重ね、次に発生するかもしれないときへの備えをしておく必要がある。

関連記事