日本社会はアメリカ化するか? これからの経済・家族・福祉の姿

データで読み解く「日本の構造」
橘木 俊詔 プロフィール

経済の効率化には格差が必要?

一所懸命働くかどうかの選択は、本書の主要関心の一つである格差の問題と関係がある。

よく働いて能力・実績主義の下で高い賃金・所得を稼得した人は、生産活動の成果にも高い実績を示したのであるから、経済効率達成のために高い貢献をした。すなわち経済を強くするにはこういう人の実績を高く評価することが必要である。

一方でそこそこの稼得でよい人は、生産における貢献はそう大きくないと考えることができる。

これをまとめれば、経済効率のためには、賃金・所得の格差を広げるのが好ましいということになり、格差の存在は経済効率性を高めるための一つの条件となりうる。

これまでの日本では平等性の高い、すなわち格差は大きくなくとも、大多数の人は貧困で苦しんでいたので勤労意欲は高かったのであり、経済は強かったのである。

これからの時代は格差の拡大を容認しないと経済効率の達成はできない、と解釈する人が多くなっている。

アメリカ化する日本社会

これは賃金・所得格差のみならず、地域間格差に関しても該当し、東京を筆頭にして大都会の経済効率は高いのであり、一方で地方はそれが低い。

平等主義の尊重によってそれを是正せんとすれば、経済効率は犠牲にならざるをえない。

換言すれば、国民がどれだけ経済効率を重視するのか、あるいは平等志向を尊重するのか、その比率の大小によってその国の賃金・所得格差、あるいは地域間格差、ひいては教育格差などの程度が決定するのである。

日本は自由主義、資本主義を是とする人が多数派(すなわち自民党政権の継続)なので、今後も種々の格差は縮小せず、むしろ拡大する可能性があることを予想できる。

その典型なのがアメリカであり、経済効率は高いが格差も大きい。逆の立場は北欧諸国などである。

国民は平等主義を好むので社会民主主義の国であり、格差は小さいし福祉国家になっている。一方で経済は好調なので、経済効率性と平等の双方を満たしている稀有な国々である。北欧諸国は小国なので国民の連帯感が強いという特色も無視できない。

家族も頼れない時代に

本書の主要関心の一つは家族の話題であった。

戦前の「家制度」の名残があり、国民は皆婚社会であり、家族の間の絆の強い国であったが、それが徐々に崩れていることをさまざまな視点から統計を用いて明らかにした。

これまでは子どもの養育、教育費の負担、老後の経済保障や医療、介護は家族が担い手だったので、家族に頼りすぎることの弊害もめだってきた。

さらに個人主義の浸透により、家族を助けることにすら苦痛を感じる人が増加し、特に福祉の分野でさまざまな問題を露呈することになる。

選択肢は3つある。第1は、誰にも頼らずに自分で福祉のことを考えよ、といういわばアメリカ型の自立主義である。

第2は、過去の日本は家族の絆に頼るという美徳の国だったので、今進行中の絆の崩壊を元の姿に戻す案がある。

第3は、ヨーロッパのように福祉の担い手は政府という福祉国家にする案がある。

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