第94回「キネマ旬報ベスト・テン」にて、読者選出日本映画ベスト・テン第1位、読者選出日本映画監督賞など数々の映画賞を受賞している、三浦春馬さん主演の映画『天外者(てんがらもん)』。三浦さんが圧倒的な熱量で演じたことも大きな話題となり、昨年12月から劇場公開され、現在もロングラン上映中だ。

©2020映画「五代友厚」製作委員会

映画『天外者』は、幕末から明治初期に活躍し、“天外者(てんがらもん)=すさまじい才能の持ち主”と称された偉人・五代友厚の人生を描いた歴史群像劇。薩摩藩士であり、実業家の五代友厚が同世代を生きた坂本龍馬や岩崎弥太郎などの仲間たちとともに日本の未来に希望を抱き、奮闘する姿が描かれている。

この映画を観賞後、“『天外者』は、(三浦)春馬くんの今までの「集大成」とも言える作品だ”と、その想いをFRaUwebに寄稿(「間違いなく三浦春馬の「代表作」!『天外者』で見せた凄まじい力」)してくれた漫画家で小説家の折原みとさん。折原さんは、デビュー当時から三浦春馬さんを見続けてきたファンの一人だ。

その折原さんの記事では、折原さんが感銘を受けた映画のシーンについても、いくつか触れられている。この印象的なシーンはどのような物語を背景に再現されたのかーー。

映画『天外者』の脚本を手がけた小松江里子氏のシナリオをもとに、劇中のシーンをより深く読み進められるよう作成された書籍『映画ノベライズ 天外者』から抜粋し、折原さんが教えてくれた感動的な名場面を振り返ってみたいと思う。未公開カットを含めた映画の場面写真も必見だ。

三浦春馬は現代の五代友厚のよう…

映画の序盤で、遊女のはる(森川葵)と出会う五代。
彼女の「遊女だって字を覚えたい。本が読みたい。世の中のことを知りたい」という叫びが、その後の五代の生き方の基礎となる。

(折原さん寄稿記事より抜粋)

才助が逃げ込んだ丸山遊郭の一角にある遊女屋「梅もと」の裏の空き地では、遊女のはるが、妹分のきくたちに字を教えていた。
そこに、赤ら顔をした侍二人が通りがかった。相当に酒が入っており、面からは理性の色が失せている。
「おいおい、何してんだ?」
下卑た笑みを浮かべ、侍は遊女たちに近づく。そのすぐ傍を、追っ手から逃げてきた才助が通りかかった。はるを見て、ひと目で橋で出会った娘だと気付いた。
年下の遊女たちを守るように立ちはだかったはるに、侍たちは口々に下種な言葉を放った。
「お前らには、体を売るという大事な務めがあるだろう?」
「字を覚える暇があったら、男をたらしこむ手管でも考えろ。それとも……教えてやろうか?」
笑いながら、一人がきくに抱きついた。その足が地面に書いた字をかき消すのを見て、はるは悔しさのあまり、きくを侍から引き離そうとしながら叫んだ。
遊女が字を覚えて何が悪い? 本が読みたいんだよ。世の中のこと知りたいんだよ。夢くらい……夢くらい、見たっていいだろ!

(『映画ノベライズ 天外者』第一章 駆け抜ける青春 より抜粋)