2021.03.22
# 脳科学

食べ物の好き嫌い克服の脳内メカニズムが見えてきた…カギは「嫌悪記憶の消去」にあり

そのとき脳で何が起きている?

みなさんは嫌いな食べ物、ありますか?

「好き嫌いは体によくない」なんて言われても、人それぞれ多少の苦手はあって当たり前というもの。一方で食べ物の「好き嫌い」には不思議も多く、昔は嫌いだった食べ物がある時から好きになったり、逆に以前は食べられていたものが突然嫌いになったりすることもよく聞く話です。

こうした「時間の経過とともに好き嫌いが変わる」事象はどうして起こるのでしょう? 背景にある「食べ物の好き嫌いが生まれるメカニズム」がわかれば、応用して「嫌いな食べ物を好きになる方法」を導くこともできそうです。

まさにそんな「食べ物の好き嫌いのメカニズム」の研究に取り組むスペシャリストが、大阪大学歯学部大学院歯学研究科の豊田博紀准教授。今回は豊田先生にお話を伺い、研究の最先端について教えていただきました!

実は複雑な「好き嫌い」のメカニズム

──早速ですが、「食べ物の好き嫌いが生まれる理由」について教えていただけますか?

豊田 食べ物の好き嫌いが生まれるメカニズムとしては、「遺伝的要素」によるものと「環境的要素」によるものの、2つのパターンが知られています。

まず遺伝的要素からご説明します。前提として人間が感じる食べ物の味は「甘味」「酸味」「苦味」「塩味」「うま味」の5種類の基本的な味「5基本味」から構成されています。そしてこの5種の味は人間が本能的に「栄養になる成分」と認識する味と「有害な成分」だと認識する味とに二分することができます。

「栄養になる成分」と認識される味は「甘味」「塩味」「うま味」の3種です。

「甘味」は主に糖分によって感じられる味で、糖はエネルギー源になる。疲れたときには甘いものが食べたくなりますよね。同様に、「塩味」はミネラルの味。運動をして汗をかくとしょっぱいものを身体が求めるようになります。

それから「うま味」は、アミノ酸の味。アミノ酸はタンパク質のもとになるもので、これもやはり人間の身体をつくるうえで欠かせない栄養素です。昆布や鰹節など、だしに使われる食材や、うまみ調味料にはアミノ酸の一種であるグルタミン酸が豊富に含まれています。

このように、「甘味」「塩味」「うま味」の3つの味は、我々の生命活動に必要な成分の味として、遺伝子レベルで好きだと感じるようになっていると考えられています

取材に応じていただいた、大阪大学歯学部歯学研究科の豊田博紀准教授

──身体に必要なものは、本能的に好きと感じるようになっているのですね。残る2つの「酸味」と「苦味」はどうでしょうか。

豊田 「酸味」は食べ物が腐ると生じる味ですし、「苦味」は毒になる物質を感じ取るための味だと言われており、いずれも人間にとって「生まれつき苦手な味」であることが知られています。

酸っぱい梅干しが嫌い、ピーマンの苦味が嫌いといったことは、人間がもっている腐った食べ物や毒物を避けるための本能による可能性が考えられます。こうした本能的な反応が、好き嫌いの原因のうちの遺伝的要素と呼ばれるものです。 

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