ラストバンカー・西川善文の部下登用術「序列や年次で見ては駄目」

西川善文『仕事と人生』(4)
西川 善文 プロフィール

部下に欠けているところは上司がフォロー

「役職や報酬でなく、能力を活かす」という抜擢の仕方で参考になるのは、日露戦争時に日本海軍が秋山真之という英才を使いこなしたことだ。早い時期から作戦立案能力を認められていた秋山は、日露戦争で連合艦隊の参謀に加えられた。だが、責任者のポストを与えられたわけではないし、階級が上がったわけでも俸給が上がったわけでもない。参謀長だった上司はのちに「作戦はすべて秋山君が立てた」と言ったそうだが、作戦の立案を任された。能力のある人材を適所に配置して、力を発揮させる。若いが故に欠けている部分は上に立つ者がフォローする。こういう組織が結果を出すのだと思う。

 

もっとも、組織における人の扱いはデリケートな問題である。自分より若い者や下位の者が重用されると、大抵の人は悔しいと思うし、嫉妬する場合もあるだろう。その点では、「誰が言ったかではなく、何を言ったか」という基準を、トップが組織に浸透させておくことが大事になる。

トップが「この組織の目的は何か」をしっかり頭の中に入れていれば、年の若い人間が言おうと、あるいは副社長が言おうと、正しいかどうかを見抜くことができる。あとは、トップの心持ち――言い換えれば「勇気」――の問題である。若い人がいいことを言っていても、ナンバー2に遠慮して取り上げない、あるいはナンバー2に「君が担当してくれ」と言って任せてしまうようでは組織の衰退は免れない。

これもまた「言うは易し」の典型ではあるけれども、組織のためには「序列にこだわらない風土」が大事である。弾力性を失った組織は保たない。

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