ラストバンカー・西川善文の部下登用術「序列や年次で見ては駄目」

西川善文『仕事と人生』(4)
西川 善文 プロフィール

子どもに会社を継がせるときも序列にこだわるな

一方、中堅以下の企業、特に同族会社になると、ときどき序列を覆すトップ人事が行われる。株式会社であっても実態が個人経営に等しいところは、経営者である親が息子に社長のポストを継がせたがる。跡継ぎの息子が優秀であればいいが、問題は二代目が凡庸である場合だ。創業者の親が苦労して会社を立派にすると収入が多くなるから、子どもを甘やかしがちである。また、継いだ会社の業績がよければ資金繰りもスムーズにつくので、苦労していない二代目が余計な設備投資をやったり、成算の立たない新規事業に手を出したりする。あるいは、順調な現状に甘んじて新しい取引先の開拓がおろそかになり、次第に業績が下降線を描くという例もある。

 

会社を息子に譲るとしても、長男、次男、三男という兄弟の序列にこだわらず、「誰が適任か」という基準で選ばなければならない。もし、長男を二代目にして駄目だったらすぐに辞めさせて、しっかりしていると思われる弟を三代目に引き上げる。こういうことを思い切ってやる必要がある。

ちなみに、息子を社長にして経営が行き詰まったとき、創業者が社長に復帰した会社もある。これは逆序列と言えるだろう。自分が社長をしながら三代目を育てようというわけだが、三代目が育つまでに時間がかかる場合は外部から人を入れるのが最も適切な対応である。同族会社はなかなかそこを思い切れないのだが、こういう決断ができないとうまくいかないように思う。

実は、外部から人を入れることは企業内の序列を崩す上で、一つの手段である。住友銀行がリテール(個人向け)部門を強化するとき、シティバンク出身者を招いて責任者にした。大企業でもそういうやり方で序列を崩すことができるが、これはいわば「劇薬」なので、日常的に使う手ではない。基本的には先ほど述べたように、「考えていること」「言っていること」が「もっともか、どうか」で判断することこそ肝心要と心得るべきである。

そして、「もっともだ」と思ったならば、その人間を「登用」する。登用と言っても役職を引きあげたり、給料を上げたりするということではない。キラリと光るものを認め、その意見を組織の意見として採用すればいい。意見を認め、尊重することで、その人はより一層成長するというメリットもある。

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/