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ラストバンカー・西川善文の部下登用術「序列や年次で見ては駄目」

西川善文『仕事と人生』(4)
2020年9月に逝去した三井住友銀行元頭取・日本郵政元社長の西川善文氏は、2013年から翌年にかけ、記者と編集者を相手におおいに語ったことがある。仕事とはどのようにするべきなのか、どんな人が成果をあげるのか。語られたことは、長年、大組織の中で人に揉まれ、人を観察し、お客と相対し、トップとして人を率いた経験と、持って生まれた眼力によって培われた、西川善文ならではの奥深いものだった。死去から半年経った3月に、それを一冊の本『仕事と人生』として刊行することになった。「ラストバンカーの遺言」というべき本書から、どんな時代も変わらぬ仕事術を、数回にわたりご紹介したい。今回は部下登用法について。

誰が言ったかではなく、何を言ったか

組織のサイズが大きくなればなるほど、序列を整え、命令系統や責任の所在を明確にする必要性が出てくる。個人商店であれば、親父さんが全権を握って店員にいちいち指示することも可能だが、一万人の社員を擁する会社で社長が同じことをしようとしてもできないことは自明である。一定規模の組織であれば、取締役、部長、課長、係長、主任といったポジションを設けて権限を移譲し、それぞれの責任で仕事を進めてもらわなければならない。

そこで問題となるのは、組織の序列によって経営が硬直してしまうことだ。いわゆる官僚化の弊害である。組織というものは大なり小なり官僚化することは避けられないかもしれないが、過度に官僚化した組織は衰退する。少なくとも、民間企業はその運命を避けられないと私は思う。

組織に害をもたらす官僚化の一つは、意思決定において「何を言ったかではなく、誰が言ったか」を基準とすることだ。たとえば、部の会議で部長、次長、課長、係長、役職に就いていない社員の順で発言したとしよう。その中で係長の意見が最も適当だと部長が判断したら、課長が反対しても部長は係長の意見を採用すべきである。次長が迷っていて、課長がしっかりとした意見を言ったのであれば、部長は課長の言うことを認める。その反対に、意見の中身ではなく、組織の序列にしたがって上から順番に評価してはならない。

 

組織内の二番手、三番手、四番手であろうが、間違いないとトップが認めたならば「それをやろう」と決断する。これは人の上に立つ者に求められる勇気であり、組織の発展に不可欠な要素である。

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