食のスペシャリスト&グルメに精通する識者で構成される「FRaU Foodies」が、今イチオシの料理やスイーツなどをお届けします。今回は、いつも美味しいパンを紹介いただいているモデルのパン野ゆりさんが、おすすめ漫画をご紹介。といっても、もちろんパンのお話。しかも、かなり独特なお話なのです。

パン野さんがおすすめするパンをまとめて見る▶︎

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パンにすべてを捧げた鬼才が描く
めくるめく摩訶不思議なパンの世界

「パンの雑誌、ムック本、レシピ本やパンにまつわる書籍はたくさん持っているのですが……」というパン野さんが、「先日初めてパンの漫画本を発見しました」と語るのが、『あるはずさ、胸の奥に、心のパンが。』という作品

『あるはずさ、胸の奥に、心のパンが。』¥900 発売:竹書房 発行:コアミックス (C)コモンオム/コアミックス

2020年7月20日に発売された本作の著者はコモンオムさん。パン野さんがパンに魅せられたひとりなら、本作の著者・コモンオムさんもパンに魅せられたひとり。パンを愛し、パンに愛された漫画描きなのです。

フランス風のパンをはじめて食べたときに衝撃を受け、販売員としてパン屋さんに勤務。休日はパン屋巡りに勤しみ、気づけば毎日3食がパンに。その結果、突如悲劇が襲う。それでもパン好きがやめられず、独自のジャンル「パン漫画」を確立すべく、漫画家として活動。唯一無二の作風が誕生したのです。

パン野さんがコモンオムさんの作品を読んだ感想は……。

「全力でシュール! シュール! シュール! 終始シュールな世界観にどっぷりハマりまくってしまいました」。

どれほどまでシュールかというと、下記に挙げた目次のタイトルをご覧あれ。

「有頭パン」
「なれそめパン」
「パンのいる家族の風景」
「クロワッサンインザスカイ」
「パン派」

どうでしょう、気になるでしょう。パン野さんも本書について熱く説明してくれました。

「頭は食パン、身体が人間という、なんとも奇妙でアイコニックなパン人間のカナタ君。パンと人間のハーフという前代未聞な彼が織りなす、笑顔あり、涙ありの物語。パンワールドに俄然引き込まれてしまいました。

その他にも少し変で、温かくて、泣ける。行き過ぎたパン愛が産んだ五切れの物語です」

そう、こちらはパンをモチーフにした短編集。とはいえ、世界観が統一されているので、違和感なく読めます。しかもそれが、人間が住む世界なのか、パンが住む世界なのか、その世界線が絶妙なズレを起こしていて、それがどこかリアルなんです。

パン人間のカナタ君が登場する「有頭パン」は、SNSでも10万人が困惑したといわれる話題作。ほかにもパンをペットにする家族や、パンを生む女性など、想像を絶する登場人物というかパン物というべきか、が登場します。

冒頭からかなり不思議で、ときにクスリとして読んでいたはずが、いつしかその世界にのめり込んでいき、どこか笑えなくなっていきます。それどころかホロリときたりして。

それは、世の中見た目で判断しちゃいけない、偏見とは何かを考えさせるほどにどっぷりと……コモンオムさんの技量に感服します。

また、80年代テイストというか昭和感が漂う絵と、これまたトレンディドラマのようなひと昔前のストーリーが見事にマッチ。それも作品にハマる理由のひとつといえるでしょう。

もっともっと見どころを書きたいところですが、正直もうこれ以上は内容を知らずに読んでほしい。それほどまでの衝撃作です。先入観を持たずに読んでいただいて、パン野さんのようにどっぷりとこの世界にハマってみてください!

あるはずさ、胸の奥に、心のパンが。
著者のコモンオムは、一貫して「パン」を題材にした作品を描く新進気鋭の漫画家。青年漫画誌「月刊コミックゼノン」漫画大賞にて2度の審査員特別賞を受賞している。本作は、"一冊まるごとパン"の作品を集めた短編集。頭がパン・身体が人間の「パン人間」の複雑な心中を描き、SNSでも大反響を巻き起こした「有頭パン」をはじめ、パンをペットにする家族、パンを受胎する女性など5編を収録。発売:竹書房 発行:コアミックス

PROFILE

パン野ゆり Yuri Panno
パンコーディネーター、パンシェルジュ。日本全国のベーカリーを訪れ、年に数回は海外にも足を運び、パンを独自の視点で分析している。トークショーやラジオに出演する他、テキスタイルブランド「gochisou」と東日本橋の『BEAVER BREAD』とのコラボレーショングッズを発売。活躍の場を広げている。モデル・山野ゆりとして、雑誌や広告、CMなどに出演。モデルの職業を活かした、太らないパンとの付き合い方も考案している。

Composition,Photo:Seiki Ebisu