2021.03.10
# 企業・経営

なぜ日本企業だけ「テレワークによって生産性が落ちる」のか? その根本的な理由

海外では生産性が上がっているのに…
加谷 珪一 プロフィール

ここ数年、官公庁の文書改ざん問題などが指摘されてきたが、すべてを記録として残すことが絶対条件として求められる官公庁ですら、文書の作成や管理が杜撰に行われているという現状を考えると、民間企業において文書化が進んでいないのはむしろ当然かもしれない。

これまでの時代は、ルール化や明文化を実施しなくても、皆が顔を揃えれば何とかなったので、とりあえず仕事を進めることができたが、これからはそうはいかなくなる。その理由は、全世界的にビジネスのデジタル化が進んでおり、ビジネスの多くがITインフラとセットになるからである。

〔PHOTO〕iStock
 

ITシステムに業務プロセスを移管する際には、「あうん」の呼吸は一切通用しない。誰に何の権限があり、どの業務をいつまでに誰が実施するのかが、明確に定義されていなければ、ビジネスをシステムに実装することは不可能である。業務のルール化や明文化が実現できていた組織は、何の苦労もなくデジタルに移行できる。ところが、曖昧な業務を繰り返してきた組織は、ここで大きく躓いてしまうのだ。

日本企業は他国と比較してビジネスのデジタル化が遅れているという指摘があるが、その理由はITの技術力ではなく、ビジネスの文書化が遅れていたことにある。結果としてコロナ危機をきっかけとしたテレワーク・シフトにおいて十分な成果を上げられないという現状につながっている。つまりテレワークの問題は単純にテレワークではなく、日本企業のビジネスプロセスそのものが問われていると考えた方がよい。

ビジネスを明文化したり、文書化することにはかなりの手間と時間がかかり面倒である。だが諸外国の企業は、この面倒な作業を根気よく、そして地道に積み重ねており、それがデジタル化を進める大きな原動力になった。こうした努力を軽視する組織は、IT社会ではあっという間に競争力を失ってしまう。

コロナ終息後は、今までのペースをはるかに超える水準でビジネスのデジタル化が進むと予想されている。しかも、この動きは不可逆的なものであり、デジタル化に対応できた企業とそうでない企業には、構造的かつ致命的な格差が生じるだろう。

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