3.11から10年…福島の「情報災害」が未だに払拭されない理由

福島の今を知るための「5つの論点」
林 智裕 プロフィール

1)避難地域は今どうなっている?

まず、避難地域が今どうなっているか。避難解除された時期などにより帰還や復興の状況は大きく異なるものの、復興拠点には住民が戻りはじめ、週末は商業施設を中心に観光客も多数訪れ賑わいが見られます。

浪江町の「道の駅なみえ」には、すでに「密」が懸念されるほど沢山の観光客が訪れています。今後はここに無印良品が新たに出店する他、山形県へと避難していた地元の酒蔵がこの地で酒造りを再開する予定にもなっています。

また、事故直後は廃炉作業の拠点と化して長らく閉鎖されていた楢葉町の「道の駅ならは」では源泉かけ流しの日帰り温泉が人気を博し、順番待ちの列まで出来ています。その隣の広野町では震災後に国産温室バナナの栽培をはじめた他、近くの公園ではたくさんの子供達が遊んでいる日常が見られました。

浜通り地域を南北に繋ぐJR常磐線は昨年3月14日に全線再開通しており、先月13日の福島県沖地震で大きな被害を受けた東北新幹線の代替交通機関として東京~仙台を繋ぎ、大いに活躍しました。

一方で、未だ原発事故前ほどには住民が戻っていないという現状もあり、特に避難解除が遅れた自治体ほど顕著です。ただし、すでに帰還や居住のハードルは放射線への懸念という以上に雇用や病院、教育等の生活インフラの問題がより大きいと言えるでしょう。

Gettyimages

双葉郡内には10年前の震災直後の姿のまま朽ち果てた建物や取り壊され更地になった場所も多く、今も立ち入り禁止のバリケードが延々と並ぶ無人の風景が見られる場所は少なくありません。その反面、復興の槌音が響き真新しいアパートや住宅が立ち並ぶようになった地区もあり、ところにより明暗がかなり大きく分かれています。

また、福島県浜通り地域ではこの地域の将来に向けて、「イノベーションコースト構想」という地域と日本全体の未来に資するための建設的構想も進められています(これらの詳細は下記の復興庁HPをご参照ください)。

https://www.reconstruction.go.jp/portal/chiiki/hukkoukyoku/fukusima/material/20190131_fukkokasoku.pdf

2)原発事故での健康被害は?

次に、原発事故の健康被害の現状を挙げます。

東電原発事故では被曝自体を原因とした被害は起こらず、今後も考えられない、遺伝等次世代への影響もないことがわかりました。あくまでも結果論ではありますが、東電原発事故ではそもそも懸念される量の被曝そのもの自体が起こらなかったこともわかっています。

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/151309.pdf

https://iopscience.iop.org/article/10.1088/0952-4746/36/1/49/pdf

これらは国連科学委員会(UNSCEAR)他、多数の国際的知見の裏付けが得られています。

https://synodos.jp/fukushima_report/21606
(UNSCEARの報告はなぜ世界に信頼されるのか――福島第一原発事故に関する報告書をめぐって明石真言氏インタビュー / 服部美咲)

一方で、放射線による直接的な要因以外での健康被害は多発しています。

例えば、福島県における震災関連死2313人(2020年9月30日時点)は、津波など震災を直接の原因とする死者1607人(2014年2月10日の警察庁集計)を大幅に上回っています。これは宮城県の929人、岩手県の464人と比べても突出しており、「命を守るために避難したことが逆に死者を増やした」可能性を強く示唆させるものです。

 

長引く避難生活や生活環境の変化、精神的なショックやストレスが健康に悪影響を与えたと思われるケースも多数報告されています。そういう意味で、原発事故による健康被害は極めて甚大だったといえるでしょう。

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