富岡町 夜の森の桜並木(2017年筆者撮影)

3.11から10年…福島の「情報災害」が未だに払拭されない理由

福島の今を知るための「5つの論点」

あれから10年

今年の3月11日で、未曾有の被害を出した東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から10年を迎えます。

10年の間、多くの方々の力と善意によって福島は大いに助けて頂きました。もちろん私は福島の何かを代表する立場でもありませんが、福島に生まれ育ち、今もこの地に暮らす一個人として、改めて深く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

ところで、みなさんには、この10年で福島の状況がどう変化し、現在どうなっているのか、まだ残されている課題は何なのか、についてどれくらい正確に伝わっているでしょうか。

実際、よほど関心を持ち続けてくださった方を除けば正直よく判らない方が多いのではないかと推察します。しかしそれは全く責められるべきことではありません。そうなるのも無理はない理由がちゃんとあるからです。

第一に、単純な話として、原発事故に関連した課題やテーマは非常に広範囲に及ぶ上、理解の前提に高度な知識や専門性を求められがちで、ただでさえ難しい、判りにくいハードルの高さがあります。

それに加え、時間経過による状況の大幅な変化、議論と試行錯誤の積み重ねにより、震災初期の「常識」や「最善」が全く使い物にならないどころか、今や逆に「非常識」「害」に変わってしまったケースさえあります。これらに素早く対応し、理解を深めていくのは極めて困難でしょう。

ただし、実はそれ以上に情報共有を妨げた大きな要因もあります。詳しくは後述しますが、それは東電原発事故が持つ「情報災害」という大きな側面です。

Gettyimages

10年目の福島を知るための「5つの論点」

ともあれ、まずは3.11から10年目の「福島の今」を改めて知るための5つの結論を先に挙げておきます。あくまでも概略ではありますが、お時間の無い方は、とりあえずこの5点だけおさえて頂けると幸いです。

【 1)避難地域は今どうなっている?】

・避難解除された時期などにより帰還や復興の状況は同じ双葉郡地域内でも大きく異なり明暗が分かれる。
・復興拠点には住民が戻りはじめ、週末には商業施設を中心に観光客も多数訪れ賑わいを見せている。
・現在、帰還や居住のハードルは放射線というよりインフラ整備の問題がより大きい。
・福島県浜通り地域では「イノベーションコースト構想」という、地域と日本全体の未来に資するための建設的構想が進められている。

【 2)原発事故での健康被害は?】

・被曝自体を原因とした被害は起こらず、今後も考えられない。遺伝など次世代への影響もない。
・東電原発事故ではそもそも懸念される量の被曝そのもの自体が起こらなかった。
・一方で放射線以外を要因とした健康被害は多発し、震災関連死も福島が突出した。

【 3)食の安全は大丈夫なのか?】

・日本の食品基準が世界に比べ極めて厳格で、実際には基準を超えたものを多少食べても全く影響は無い。
・そもそも出荷されている福島県産品はすでに放射性物質自体がほぼ検出されず、基準値を超えたものも出荷されていない。他県産の食品と比べて放射線による健康リスクに差は無い。
・風評被害はおおむね落ち着いてきたが、贈答品や海外の一部にはまだ根強いこと、価格や販路が戻らないなど課題も残る。
・福島の食は美味しいことで知られるようにもなった。米は特A評価続出、日本酒は全国新酒鑑評会で金賞受賞数7年連続日本一の快進撃を続けている。

【 4)福島はまだ放射線量が高いのでは?】

・大規模な除染や時間経過に伴う半減期などにより放射線量は大幅に低下している。制限された一部地域を除き、普通に生活しても全く問題は無い。
・除染で出た大量のフレコンバッグのほとんども、間もなく中間貯蔵施設への運び込みが完了する。
・一方で、除染物の中でも放射線量が低く健康影響を与えないものは減容化のためにも土木工事等での有効利用が求められている。

【 5)今も解決できていない問題は?】

・「安全」は充分に確保できた一方、「安心」の問題が残されている。
・除去土壌等の有効利用やトリチウムを含む処理水処分が誤解と偏見で阻害されている。
・甲状腺検査過剰診断問題での人権侵害が懸念されている。
・情報災害としての原発事故。「福島の今」が判りにくい原因は情報が足りないというより、虚偽や印象操作などの粗悪な情報の過多とそれらが野放しにされたことにある。

 

以下、それぞれについて、もう少し詳しく解説していきます。

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