軍の暴力にミャンマー市民が「踏み絵&魔除け」作戦で対抗する理由

スー・チー女史の「非暴力抵抗運動」思想

1日で30人以上の死者

クーデターで政権を奪取し、抵抗を続ける市民への武力鎮圧を強める軍の強硬手段で死傷者が日々増大しているミャンマーでは、軍の市民への対決姿勢が一層深まり、解決策が全く見えない混沌とした状況が続いている。

2月1日のクーデター発生以来、ミャンマー全土に拡大している一般市民の「反クーデター」「反軍」デモや集会は、その後、公務員や銀行員、公共交通労働者、医療関係者などによる職場放棄、就労拒否という「不服従運動(CDM)」に拡大し、経済活動や市民生活に深刻な影響を与えはじめており、軍は焦燥感を強めている。

こうした焦りを背景に、クーデター発生1ヵ月となる3月1日以降、中心都市ヤンゴンや中部第2の都市マンダレーなどでデモ鎮圧を強化、1日で30人以上の死者も報告される深刻な状況となっている。

現地からの情報によると、軍は鎮圧に際して、これまでの放水、催涙ガス、ゴム弾に加えて限定的に使用していた実弾を頻繁に発射するようになり、一部では「短機関銃(サブマシンガン)」の使用まで報告されているという。

エスカレートする治安当局の武器使用を伴った強硬手段に対して、デモや集会で抵抗する市民は投石やパチンコなどでささやかな抵抗を試みてはいるものの、基本的には「非暴力」を貫いている。そうした市民の側の対応もまた、軍の一方的な武力行使をエスカレートさせ、その結果、死傷者の増加を招いているとみられている。

バリケード、踏み絵、魔除けで妨害

市民たちが非暴力による反軍、反クーデターの抵抗運動を続ける背景には、「治安部隊の武器使用に対して我々も武器を使用すれば、徹底弾圧の口実を与えるだけ」という考えと同時に、現在拘束されているアウン・サン・スー・チー国家最高顧問兼外相がインドから学んだとする「非暴力抵抗運動」の思想がある、といわれている。

このため2月中はヤンゴン市内の主要交差点や目抜き通りなどで行われていた大規模集会やデモ行進という「面的戦法」は最近すっかり影を潜め、小規模、小集団が各地の路地や裏道で道路を封鎖し、治安部隊が迫れば無駄な抵抗を断念して一斉に逃げるという「点的戦法」に切り替わっているという。

国軍司令官の顔写真がプリントされたコピー紙(南洋通信社)

さらに市内各地の道路には、クーデターで実権を掌握したミン・アウン・フライン国軍司令官の顔写真が印刷されたコピー紙が大量に貼りつけられている。顔写真の上にバツ印が描かれたコピーの上を歩いて写真を踏みつけたり、自転車で通過したりして「抵抗」を表しているのだ。

ところが、警察など治安当局者は国軍司令官という「最高権力者」の顔写真を踏みつけて進むことができないため、丁寧にコピーを1枚1枚はがして行かざるを得ず、治安部隊の迅速な進行に影響を与えるという効果があるという。

 

こうした戦法は、いってみれば現代の「踏み絵」で、ネットを通じて広まったこの「作戦」はヤンゴン市内各地に拡大し、その様子はネットやSNSで伝えられている。

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