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使えない部下をピカピカの人材に変える、ラストバンカー・西川善文流指導術

西川善文『仕事と人生』(3)
2020年9月に逝去した三井住友銀行元頭取・日本郵政元社長の西川善文氏は、2013年から翌年にかけ、記者と編集者を相手におおいに語ったことがある。仕事とはどのようにするべきなのか、どんな人が成果をあげるのか。語られたことは、長年、大組織の中で人に揉まれ、人を観察し、お客と相対し、トップとして人を率いた経験と、持って生まれた眼力によって培われた、西川善文ならではの奥深いものだった。死去から半年経った3月に、それを一冊の本『仕事と人生』として刊行することになった。「ラストバンカーの遺言」というべき本書から、どんな時代も変わらぬ仕事術を、数回にわたりご紹介したい。今回は部下に厳しくあたれない上司はどうしたらいいか、そのヒントをお届けする。

間違いはしっかり理解させる

部下の教育と指導は上司の大事な仕事だが、調査部のときの体験から例を挙げよう。調査部にはいくつかのグループがあり、係長というような肩書がついていなくても先輩が新しく配属されてきた人と一緒に仕事をしながら指導するシステムだった。最初は「こういうことがポイントだ」と教えたり、「この会社の誰それに聞けばよくわかる」とアドバイスしたりする。

また、新人がいろいろと調べて文章にまとめてきたレポートで、調べ方が不十分だったり、理解が大ざっぱで甘かったりするケースも当然ながらある。そういうところをなくさせるために先輩がいろいろと指導するが、ときには新人や経験年数の少ない人を調査対象の会社に連れていき、私が聞いたことをメモに取らせた。そして、銀行に戻ってから「君が書いたレポートと、今日、聞いた話との間にどれだけの違いがあるか」と尋ねた。そうすることで、「ここが間違っていた」と理解させるのである。

その他にメモの取り方も大事な教育項目だった。それは要点を簡潔に書く訓練になるからだ。ダラダラと長い文章は支離滅裂でよくわからないものが多いし、読むときに時間がかかる。読む人の立場に立ち、一見してわかるようにポイントだけを簡潔に書く。そのトレーニングとしてメモ取りがあった。簡潔に文章を書けるようになれば、融資の権限を持つ審査部でも、支店の貸付係でも、いろいろな職場でその力が応用できる。

 

「ポイントのつかみ方と、その表現の仕方がきちんとできれば一人前」。これが調査部員にとって一つの目標だったと私は思っている。

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