ラストバンカー・西川善文が一刀両断した「口先だけの駄目上司」

西川善文『仕事と人生』(2)
西川 善文 プロフィール

任せた上司には責任がある

任せる仕事はきちんと任せる。そのためには部下の力をよく見抜き、仕事を任せられるように育てる必要がある。といっても、完璧な人間はいないから、部下に足りないところがあれば、適宜、指導することを忘れてはいけない。

 

この「部下に任せる」ということで心しておきたいのは、「任せた上司に責任がある」ということである。自分が傷を負いたくないから、「君子危うきに近寄らず」ですべて部下に丸投げし、部下が失敗すると厳しく叱責するような人がいる。これでは話にならない。とりわけトップがそういう有り様では、よほど部下が優秀でないと会社が傾くし、非常時なら倒産する危険性が高い。トップは会社のすべてに関係する立場だ。自分が指揮する必要性を感じたときは、積極的に動かなければならない。少なくとも難題を人任せにして逃げてはいけない。

「難しい問題に直面したとき、厳しい状況下に置かれているときは、上に立つ者が火の粉をかぶってでもやらなければ、危機を打開できない」

これが私の信条である。一九九七(平成九)年、会長の巽外夫さんから頭取就任を求められたとき、「これはやるしかない」と思った。不良債権は私が担当役員としてつくったものではないから責任も何もない。しかし、「この時期にどうしても処理すべきものを処理してきれいにしなければならない。それをやらなければ住友銀行はどうにもならなくなる」という責任感に背中を押され、頭取を引き受けた。

組織の上に乗っかるだけで自分が動かずに済むのならそれでもいいのだけれども、私は「難しい問題はトップ自らが対処するしかない」と考える人間である。頭取として、さくら銀行との合併や不良債権処理では陣頭指揮を執った。「不良債権と寝た男」などと言われても不思議ではない八年間だった。二〇〇五(平成一七)年に私が三井住友銀行の頭取を退任するとき、「引責辞任ではないか」と書いたマスコミがあったが、前年に不良債権処理で赤字決算を出すなど、自分で問題処理を手がけてきたから、そういう見方が出たのだろう。

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