ラストバンカー・西川善文が一刀両断した「口先だけの駄目上司」

西川善文『仕事と人生』(2)
西川 善文 プロフィール

とはいえ何でもかんでも部下と一緒では駄目

丸ノ内支店長時代のことになるが、部下が取ってきた融資案件に対して、審査部が「この貸金は認可しない」と言ってきたり、新規の貸出先について、「可でもなし、不可でもなし」という煮え切らない意見をつけたりすることがたびたびあった。納得できない場合は、私が電話をかけて具体的に聞く。たいがいは筋が通った判断ではなく、「ああだ」「こうだ」と屁理屈をこねる。そういうときは「お前たちは知らないのだから、支店の言うことを聞かないと仕方がないじゃないか」と担当者を怒鳴りつけた。

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別に審査部とけんかするつもりはない。彼らには厳しく言わないと話が通じないのである。特に「なんとなくやりたくない」という気持ちを持っているときは、屁理屈を持ち出して逃げようとする。典型的なのが新規の貸し出しだ。新規貸出先の社業を知らない審査部は判断しづらい。自信が持てないと「担保を取ればよろしい」という担保主義に走りがちだった。その結果、お客さまを逃すケースがずいぶんあった。

とにかく電話で審査部に厳しいことを言うものだから、部下たちには「頼りになる」と映ったらしい。当時は支店の業績表彰が行われていて、私が支店長だった一年の間に丸ノ内支店は新規開拓で表彰された。支店長に業績表彰を受けさせようとして、行員たちが支店を挙げて一生懸命やってくれたようである。

もちろん、率先垂範だからといって、何でもかんでも部下と一緒にやればいいというわけではない。上司には上司の役割があるし、部下には部下の役割がある。それぞれに役割があることをよくわきまえ、リーダーはリーダーとしての役割をしっかり果たしていく。その上で、必要に応じて自ら動くときは動くのである。

逆に、率先垂範を誤解して、部下がやるべき領域まで手を出す人がいる。部下のレベルで十分できる仕事でも「その契約をまとめるときは私が同行しよう」などと言われたら、部下は上司のスケジュールに合わせなければならなくなる。その日にできることが上司の都合で翌日になるようでは、仕事の邪魔以外のなにものでもない。

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