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ラストバンカー・西川善文が晩年に語っていた「仕事ができる人」とは?

西川善文『仕事と人生』(1)
2020年9月に逝去した三井住友銀行元頭取・日本郵政元社長の西川善文氏は、2013年から翌年にかけ、記者と編集者を相手におおいに語ったことがある。仕事とはどのようにするべきなのか、どんな人が成果をあげるのか。語られたことは、長年、大組織の中で人に揉まれ、人を観察し、お客と相対し、トップとして人を率いた経験と、持って生まれた眼力によって培われた、西川善文ならではの奥深いものだった。死去から半年経った3月に、それを一冊の本『仕事と人生』として刊行することになった。「ラストバンカーの遺言」というべき本書から、どんな時代も変わらぬ仕事術を、数回にわたりご紹介したい。

仕事ができる人はものごとをシンプルに考える

仕事ができる人の資質とは何か。一つ挙げるとすれば「頭の中をきちんと整理整頓できる」ことが大事だと私は思う。

仕事にはいろいろな要素がある。そのすべてをクリアしようなどと欲張らず、整理整頓してみる。そして「本質は何か」を考える。言い換えると、その仕事のツボがどこにあるかをつかむのである。

また、やるべきことを一つひとつしらみつぶしに片づけていたら時間がいくらあっても足りない。そこで、重要度と緊急度を天秤にかけて、やるべきことを絞り込むことが必要になる。ビジネスパーソンなら、大なり小なり、仕事の優先順位をつけていると思うが、見落としがちなのは「自分ができること」と「自分ではできないこと」「自分でやるには難しいこと」を区別する視点である。「できないこと」はできないし、「難しいこと」をやれば手間暇がかかる。仕事にはスピードが求められる。時間に制限があって間に合わないと判断し、他の人の力を借りることが可能であれば「できないこと」と「難しいこと」は助力を求めたほうがいい。

 

こうして頭の中が整理されていれば、仕事をどうやって進めればいいかを見極めることができる。当然、仕事が速いし、成果が挙がるわけである。

これまでにいろいろな人にお目にかかったけれども、頭の中が整理されている人かどうかは話しているうちにわかってくる。頭の中が整理されている人は何事もシンプルにしか語らない。

「あれもこれも」と考えるな

徹底的にポイントを絞ってシンプルに考えることは、ビジネスパーソンには絶対に欠かせない手法である。というのは、「あれもこれも」と考えていると、なかなか前に進まないからだ。当然のことだが、すべてを対象にしていたら収拾がつかなくなる。その結果、結論を出せず、行動できない。見方を変えれば、「あれもこれも」は優柔不断の温床と言っていいかもしれない。

ただ、真面目な人ほど「あれもこれも」と考えがちではある。当人がいい加減ではなく真剣にやっているだけにかわいそうだが、これは自分で意識して改めなければどうしようもない。

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