サーキュラーエコノミーが
実現する、スマートな社会。

世界に広がり始めているサーキュラーエコノミーへの移行の取り組み。欧州ではすでに国や民間でさまざまな政策が進められている。

「EUは2019年に、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標を含む『欧州グリーンディール』政策を公表。オランダでは2050年までに100%サーキュラーエコノミーを実現することを目標に掲げています。同時に世界のグローバル企業が大量生産、大量消費の経済システムに終止符を打ち、画期的な製品やサービスを生み出しています」(中石さん)

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何やら壮大な話に聞こえるが、この転換は私たちの生活にも大きな変化を与えるという。

「たとえばスウェーデンの家電メーカー、エレクトロラックスでは消費者に掃除機をレンタルし、掃除した面積に応じて料金を請求するというビジネスモデルを構築しています。従来のように掃除機というモノを売るのではなく、『部屋を綺麗にする』サービスを提供するのです」

ここで疑問が湧く。モノを売らないビジネスで、メーカーには利益が出るのだろうか?

「もちろんです。掃除機を売却せず、所有権を保持したままレンタルする仕組みなら、丈夫で長持ちする掃除機を作り、修理や整備をしながら複数の借り手に長期間貸すことができます。1台あたりの生産コストパフォーマンスが高まりますし、製造工程でも最初からリサイクルを想定した設計や素材を選び、なるべく分解や修理しやすい製品を作ることで原料や製品を長く使え、コストや資源の無駄をカットできます」

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このシステムにはさらに旨みがある。

「レンタルする掃除機にはセンサーが付いていて、利用者が掃除した面積や部屋ごとの利用頻度、時間など、ユーザー行動が記録されます。メーカーはこうしたビッグ・データを生かすことで、よりよい商品を作ったり、新たなサービスを生み出すことができるのです」

消費者は新モデルを使いたければ旧品を返送し、メーカーは旧品をリサイクルすればいい。

「このビジネスの根底には、資源を循環させながらとことん使い続けるという考え方があります。さらに、そこにデジタル技術を組み合わせることで最大限の効率性と企業メリットと、ユーザー体験価値の向上を生み出す。実際にこうした循環型のビジネスモデルに転換した企業の多くは、目に見えて業績がアップしています」

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こうした転換は多分野で進んでいるそう。

「オランダの電機メーカー・フィリップスの照明専門企業・シグニファイでは法人に向けて電力消費量が少ないLEDライトの照明インフラを提供し、削減できた電気料金の額に応じて報酬を得ています。タイヤメーカーのミシュランも顧客にタイヤを貸し出し、走行距離に応じて料金を請求するシステムを取り入れています。どちらもユーザーの使用データを回収し、サービスや製品の品質向上に生かしています」

サーキュラーエコノミーの世界では、製品は「所有」するのではなく、サービスとして「利用」するもの。作っては捨てを繰り返すライフスタイルではなく、必要な時に必要な分だけ使い、いらなくなったら捨てずに次に必要としている人のところへ届ける。さらにそうしたサイクルがもたらす「情報」が、より便利で快適な暮らしを生み出す助けとなり、消費者もメーカーも豊かになっていく。こうした“いい循環”がずっと続いていくのが、サーキュラーエコノミーが目指す経済、社会のあり方だ。

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「サーキュラーエコノミーは経済・産業だけでなく、税制や金融、投資、社会的便宜までをオーバーホールし、その根源となる自然の生態系の保護と復元を進めます。それによって人間の健康と幸せを実現するところまでがゴール。国や自治体、NGOや企業、私たちひとりひとりがサーキュラーエコノミーへ舵を切ることが、今後の未来を左右する、大切な決断なんです」

●情報は、FRaU2021年1月号発売時点のものです。
Illustration:Amigos Koike Text:Yuriko Kobayashi Edit:Chizuru Atsuta

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